2020年を振り返ってみる(極私的なメモ)

※本エントリは、毎年恒例という感のある#裏legalAC企画の一環としてのエントリです。気の迷いでトリなんぞに立候補してしまったので、大変です。やはり早めが無難です(滝汗)。

 

毎年恒例のこの企画、一応皆勤賞*1のはず。とはいえ、毎年何を取り上げようか悩むところ。とりあえず今年は、こちらの状況的に凝った企画はできないので(謎)、こちらの一年を、特に、読んだ法律書という観点に重点をおいて、こちらの過去のエントリ等も使いつつ*2、可能な範囲で振り返ってみようかと思う次第*3。こちらの立ち位置等に起因する偏り、それが故に異論の余地があるのは言うまでもない。

 

今年については、影響度を考えれば、感染症渦とそれに伴う諸々の事柄への対応が最も大きな出来事だったことは否めない。とはいえ、僕は、そのあたりに絡んだ法律書とかは読まなかった。用事がなかったわけではないが、事態の進展の速度から書籍を読んで何かするというのは適さないという印象だったことが大きい。その分、ネット上の情報はいくつかの起点となるサイトをこまめにチェックしていた(こちらのエントリでもメモのエントリが増えたのはその表れでもある)。

 

これと関連して、デジタル化(という表現が適切かはさておき)関連の書籍も、色々出ているのは見たけれど、こちらの業務*4との関係で必要性が薄かったこともあって、結局一冊も読んでいない*5。例の「自粛」期間中は、こちらの業務も停滞していたので、その時期に何らかのまとまったインプットができるとよかったのだが、どうにも落ち着かず、腰を据えて何かをする気になれず、そういうことができなかったのが悔やまれる*6

 

さて、今回の感染症禍を別にすれば、企業法務の分野では、まずは、債権法改正の施行が大きかったはず。とはいえ、施行自体、以前から決まっていて、対応についての本や雑誌が山のようにあって、対策についての情報もふんだんにあったこと*7もあって、なんだかんだで大きな問題が生じたという話はあまりないのかもしれない*8。関連する本も何冊か目を通したし、買ったものの読めていない本(奥田総論上とか内田IIIとか)もある。それと、改正との関係では某たかし君の薄い本にも目を通した。もっとも、期待したような言い訳があまりなくて、ややがっかりしたのだが(その種の話は「厚い本」つまり内田IIIにあるのかもしれないが、読めていない。)。

 

その他の法分野についても色々な改正があったのは認識しているが*9、こちらがフォローしきれている分野がないので(汗)、後手後手に回っており、仕事上必要な時に調べはするものの、十分なフォローができているとは必ずしも言い難いのが悩ましい(涙)。

 

事務所の案件的には知財(商標法あたりが中心)分野が一定程度あるので、その分野の本をある程度目を通したが、硬めの本(その最たるものが某理論本だが)にまで手が伸ばせなかったのは残念な限り。こちらに腰を据えて読むだけの気力が足りなかったからだが。目を通せた範囲では、いずれもやや古いが、商標法律相談の基本、とファッションローは、今振り返っても興味深いものがあったという気がする。

 

結局のところ、個人的には、今年目を通した本で、僕自身にとって特に印象深かった本という意味では、メーカー法務本の2冊という気がしている。これはこちらの経歴*10に起因している部分が大きいのだが、メーカー法務を経験した身からすれば、今年出た2冊は、いずれもメーカー法務にとっては有用という思いが強かった。

dtk1970.hatenablog.com

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2冊というと納まりが今一つなので敢えてもう一冊と考えると、やはり、「文章に謎のグルーブ感がある」(copy right by らめーん先生)という紹介で話題になったこの一冊だろうか。「読ませる」感じが強かったのが印象的。

dtk1970.hatenablog.com

 

その他には、仕事に対するスタンスに関するものという意味では、某「その先」本とか某希望本とかが話題に上がっていて、前者には目を通して、なるほどと思う反面、色々割り引いて読まないと危険なのではないかと思ったり、後者については、読んでないものの、漏れ聞こえてくる情報からして個人的なスタンスと合わない*11と判断して読まないと決めたりしたりして、上記の本ほどの印象は残らなかった。

 

振り返ると、目先の話・状況に追われている感が強く、腰を据えて本を読むという時間の使い方ができなかったのが悔やまれる。まあ、そういうことをするには、こちらの精神面も整える必要があるということを実感したのが、今年得た教訓というところだろう。いつ何時、再び「自粛期間」に突入するかもわからないわけで、その時にはもっとうまく立ち回れると良いのだが。

 

これから冬休みに入るので、今度こそは、腰を据えて…と思うのだが、どうなることやら…。目先の業務に対応するためのインプットはもちろん重要だけど、自分の「背骨」を支えるようなものとしては、もっと別のものがいるのではなかろうか、そういう意味では、基本書とか古典*12に立ち返るのもよいのではないかという気がしている*13。そういうところまで手が伸ばせると良いのだが…。

 

 

 …というところで、書こうと思ったことは書いたので、オチも何もなく、エントリは終わりにしようかと。

 

繰り返しになりますが、幹事をはじめとする関係者の皆様、お疲れ様でした!

また来年!(あれ?)

*1:参加しているだけという説が濃厚だが...まあ、枯れ木も山の賑わいというし…(汗)。こちらのエントリは、自己満足のためのものばかりで、ハードルを低くすること以外に貢献しているところは、残念ながら、あまり多くない(汗)。

*2:ある程度エントリを書いていると、塵も積もれば山となる、ではないけれど、こういう形で過去エントリの再利用の仕方もあるということで…。

*3:BLJのブックガイドと連動させるという発想も脳裏をよぎったが、そもそもBLJがいつ届くか読めないという状況下では無理だった。それ以前、12月も下旬になって、こういう知らせまで舞い込む始末...(涙)。

*4:今いる事務所では、極力紙の資料はpdf化していて、ファイルサーバーに資料を置いているので自宅からでもほとんどの仕事はできたが、僕自身は家で仕事をするのが嫌いなので極力事務所に行くようにしていた。やはりボスにちょっとしたことを質問したりするのは事務所に行く方がやりやすかった。

*5:余談だが、ある案件との関係で、デジタル化に関しての一般的な調べ物のためにあるネット上の資料をダウンロードしたら、ダウンロード時にこちらの情報を開示したこともあって、その直後から、その手の業者の方々から営業電話が殺到して辟易した。ああいう営業のやり方は逆効果にしかならないと思うのだが、そうでもしないといけないほど、かの業界の方々は、何らかの意味で追い込まれているのだろうか…。そろそろ過当競争でつぶれるところとかも出てきそうだし、そうなったときに利用者側にどう言う事態が生じるか、データの引継ぎやサービスの乗り換えとかどうなるのか、というあたりに、個人的には下世話な興味があるのは確か。危機の時にこそ企業の「地金」が出るという意味で…

*6:反面、グラナダのシャーロックホームズ作品を一通り見ることができたのは良かった

*7:質はさておき。

*8:この点、先だっての、BLJで藤野先生が仕切った座談会の記事は、改正で投げかけられた問いへの「答え合わせ」の意味で興味深いものがあった。

*9:会社法改正、独禁法改正、著作権法改正、個人情報保護法改正等々...それぞれの改正がどの程度重要になるかは、個々人の立ち位置によって異なるのだろう。

*10:前にも書いたがこちらの経歴はこんな感じ。1社目。新卒で入ってまず関西で勤務、5年目から本社法務部門→4.5年国内法務をしたあと海外法務に留学含みで異動→2年東京で海外法務と並行して留学準備(この過程でblogを始めた)→サマースクール込みで1年間ボストン。LLM@Boston U.修了→シンガポールで海外法務を1年して転職→2社目。東京で日系メーカーで法務2.5年、この間にNYBarに合格してNY州弁護士登録→3社目。東京の日系メーカーで法務2年→4社目。東京で米系メーカーで法務5年9か月。働きながら司法試験に合格までこぎつける→退職して司法修習→2019年から東京エリアの弁護士事務所(主に企業法務系の事務所)でイソ弁(イマココ)

*11:個人的には、希望というものは、個別具体的な状況の中で自分自身で見つけ出すべきもので、個別の状況を超えたところで他人が何かを言うのは、自身の個別具体的な状況下では存在し得ない希望の幻影(蜃気楼)に幻惑されて頓死しかねないような事態を招来しかねないので、違和感が残る。もちろん自身のリスク管理も法務担当者にとっては重要な事柄だとは思うが…

*12:やや古いリストだが、こちらとかが参考になるのではないか。

【暫定版】法律学者不朽の名著リスト【まだまだ募集中】 - Togetter

*13:本当はこの辺りを中心にしたエントリにしたかったのだが、手を付けた我妻民法講義の債権総論が1/10程度しか読めていないこともあって、断念した。無念。