BLJ 2020年12月号

いつもの通り読んだ分の感想を、呟いたことを基に、箇条書きでメモ。予想よりも早く届いたのは、過日遅配に苦言を呈したからだろうか(多分違う)。

  • 二次妻・無双様の連載は、以前同氏が高評価をされていた某所の改訂版についてのもの。対象法令の改訂を踏まえた改訂がなされていない理由についての指摘は納得。当該改正についての一問一答との併読の仕方の指摘も納得、というところか。*1。 
  • 特集。債権法改正について、事前の対応策についての、現時点での「答え合わせ」というところか。まずはクロストーク。企業の担当者の方の声を拾っているのはBLJの面目躍如というところ*2。藤野先生の安定の仕切り*3で、個人的には、納得の読み応え。目的規定周りについての指摘については、色々思い出してニヤニヤするなど。
    弁護士の方々の記事については、売買契約の記事は、改正についての3つの視点の提示が有用と思われた。約款の記事については、立案に関与された先生が、実際の改訂例をネット上で探して分析しているのが興味深く、そのうえでの今後への示唆も興味深かった。システム開発モデル契約書の記事は、契約不適合責任の期間制限の論点における、ユーザ・ベンダ間でのやり取りで検収を誠実に行うことを阻害しない形を模索しているのが興味深かった。
  • ハーレム連載は、株式譲渡契約の表明保証条項について。紹介されている事例(実例に基づくものと思うが)が興味深い。
  • FCPAリソースガイド第2版の記事は、そもそも第2版が出ていたのを知らなかった(汗)ので、参考になった。外国公務員の範囲にしても、賄賂禁止条項の適用範囲にしても悩むところがあるのは相変わらずか*4
  • 収賄対策に関する企業担当者の声については、所属企業の属性の表示がざっくりしすぎているような気もしたが、興味深かった。個人的にはファシリテーションペイメントに対して絶対禁止という外資系メーカーの事例について、禁止の結果として不具合が生じていないか、訊いてほしかった気がした。
  • 日本企業米国子会社へのChapter11の活用の記事は、この種の概観を見たことがなかったので、なるほどと思いつつ読む。手続の予測可能性が高くないのが悩ましいが確かに説かれているメリットは重要な気がした。
  • 知識創造法務は、興味深い部分があるが、個人的には、どうもイマイチな印象。この連載は、知識というよりも技術に属する事柄が主題という理解なのだが、この種の話は文字面だけ見てもね、と感じるからなのだろう。
  • 建て替え理由の退去要求対応は、ここ10年の裁判例の傾向分析や、実費・損失の補償額の要素についての解説が個人的には興味深かった。
  • 個人情報保護体制(以下略)は、漏洩対応についてだが、時間の制約を考えるとあらかじめ準備を、というのはそりゃそうなんだろうとは思うけど、そこをどう費用対効果の高い形で進めるか、が大事なのではないかという気が*5。まあ、それは企業担当者で考える話なのか。
  • 独禁法の道標は、優越的地位の「濫用行為」についての判断の歴史を振り返りつつ昨今の問題(DPとか)への展望を考える感じ。どこの範囲をみて考えるかが重要ということになるのだろうか。白石教授のコメントは公取の中での考え方の別れ方への推測や実務的な対応策への示唆が素晴らしいと感じた。
  • (以下追記)テレワーク環境における情報管理の留意点は、総論的なところは、そりゃそうなるだろうなと思うけど、実際は難しそうにも見える。ツールのチェックリストは有用だけど、データの保管場所とか潜在的顧客とかに開示されるのか(されないがゆえにチェック不能では)?という疑問も残った。
  • アジア法務の思考回路の記事では、取締役の居住性や取締役会の開催方法についての各国事情の解説中に、それぞれの規定に違反した場合の罰則等の制裁措置の有無についての言及も欲しかったところ。現地化については、ローカルスタッフが現地語で結託して何かしたときに日本側から見抜けなくなる危険をどうするのかとかあると思うので一筋縄ではいかない予感がする。
  • スルガ銀行の件は、漸く最終回か。お疲れ様でした。

*1:で、今年は、#legalACで中山差分とかはやらないのだろうか(謎)

*2:強いて言うなら改正内容からすれば、保証周りの影響の大きかった不動産系の企業の方の声も拾ってほしかったか

*3:先生の謦咳に接したことが有るので、なんとなく話し方が脳裏をよぎったのでありました。

*4:どうでもいいことだが、著者が某外資系事務所から独立されたことに気づいた。

*5:あの事務所にそれを期待すべきではない、ということなのだろうか…