この状況下では、今後重要になると考える分野ということもあり、
破産の申し立てについて、 申立代理人となるべき弁護士向けの本で、相談・受任から、 申立準備、申立書作成、事前相談・審尋、開始決定・ 管財人への引継ぎ、と時系列に沿う形で、 取るべき事務について解説がなされている。 マニュアルと銘打つだけのことはあって、 これに従えばある程度のことはできるんだろうな、 と思えるだけのことは記載されているというのが印象。こちらは、 これまでのところ、 ボス弁が管財人だった案件に1件関与しただけだが( 無事に業務は終わった)、 その時の経験や当該事件の申立書に照らして読むと、 申立代理人の先生方はこういうことをしていたのか、 ということが分かって興味深かった。
個人的に記載内容で興味深かったのは、 個人の破産申し立てと法人のそれとでは受任通知の意味合いが異な るため、 発出のタイミングについて別異の考慮が必要となるということ。 個人については、督促を止めるというご利益があるため、 早めにするところ、法人については、 発出により取り付け騒ぎの類が生じるから、タイミングを計る( 密行性の確保)要請が働く場面があるというところ*1。 よく考えると当然という気もするのだが。
読んでいて、今一つ見え切らなかったのは、申立のタイミングとの兼ね合いで、 申立書の内容の充実(そのためには相応に時間がかかる) のと迅速性とのバランスをどう図るか、というところ。 個別事情次第というところがあって書きづらいのだろうが、 なんだかもやもやしたものが残った。
もう一つ、読んでいて、時節柄気になったのは、受任時の面接義務について、感染リスクとの兼ね合いをどうするか。おそらく、回線越しでの面談でも、懲戒とかに至らない方法はあるのだろうが、実際に書類を見ながら、 現物を見ながら、 本人の顔色を見ながら話をした方が良い場面もあるだろう。そうなると、個人的には直接面接が望ましいのではないかとも思うのだが、 それがこれからどこまで貫徹可能なのか、気になった。
第2版が出てから5年たっており、債権法改正もあったので、 そろそろ改訂がなされるのではないかと思うが、いずれにしても、 この種の業務をするうえでは必須の資料なのだろうと感じた。
*1: