BLJ2020年11月号

例によって、読めた範囲で感想を箇条書きでメモ。

 *1

  • 二次妻・無双御大の書評は、その分野の大先生の、渾身の基本書の第3版についてのレビュー。二次妻・無双御大が高く評価しているゆえか、辛口の評価は控えめに見える。第2版との併読を推奨しているようなので、本年の年末企画では、この本の差分分析になるのではなかろうか(汗)。
  • 編集後記が、(鳩)さんと(ま)さんのコメントが、なんか編集者らしいな、と思ったのでありました。
  • ハーレム教授*2連載。株式譲渡契約で、従業員の承継とか契約の承継についての表明保証条項というのは、個人的には見た記憶がないように思う。いずれについても他の形で手当てすべき話なのではないかという印象がある。従業員の承継は、承継に向けた努力義務を課すとか、カギになる従業員の内諾をクロージングの前提条件にするという形の方が実効性があるのではなかろうか。契約の承継はChange of Control条項の有無をDDで確認するべき話なのではないかと思う(代替案は対象会社に調べさせてレポートを出させるとかだろうか)。
  • アジア新興国での贈収賄リスクについての記事は、外部の弁護士事務所の立ち位置ではこうなるだろうなという程度。綺麗ごとで済まない話をどうするか、が「中の人」の腕の見せ所なんだろうけど。現地が「動ける」解をどうやって示すか…が鍵なんだけど今は「中の人」でないので、良くわからない。
  • 内容としては興味深いものを含みつつも、個人的にはいい加減に食傷した感のある、スルガ銀行の連載は、創業家の私物化度合いが凄いのにあきれるばかり。ばれなきゃなんでもありなのか、とため息をつく。
  • 独禁法の道標は、不当な取引制限における「意思の連絡」に関する事実認定について、審判審決または裁判例での変遷を追ったもの、というところか。記事で見る限りは、昭和・平成の審判決は、やや事実認定が粗雑にも見えるので、令和になって、その点の緻密が増しているように見えるのは良いことのように思う。予防法務的には同業者間での情報交換それ自体を避けるべしということになるとしても、審判決の段階で、情報交換と意思決定とを直結させるかのごとき認定はやはり不当な気がするから。白石教授からの不当な取引制限以外との関係についてのコメントでの指摘も学ぶところが多く感じた。どこで何がなされているのか虚心坦懐にみることが重要と感じた次第。
  • 失敗に学ぶ個人情報保護の特集は、かの分野に詳しい先生方の記事で手堅い印象なんだけど、BLJらしく企業担当者の声を聴くなどした方がよかったのではないかと感じた。この分野の話の性質上、及び、現下の状況下では、そういう生の声を拾うのは難しいということは想像できるのだが、それでもなお、そう感じる。
  • 個人情報保護体制(以下略)の記事*3は、分析が興味深いが、結果的に出来上がるポリシーが理解し易いものになるというと、疑問が残る気がする。
  • イスラエルへの投資の記事は、何だか脈絡がなく唐突な印象。投資が安全か、という疑問に対して、イスラエル人が安全だと言ってもどこまで説得力があるのか、素朴に疑問。カントリーリスクをどう見るのかについてもよくわからなかった*4
  • 相続と債権回収の記事(以下略)は、相続財産管理人の実務の解説が興味深かった。相続人の調査までは経験したけど、相続財産管理人はしたことがまだないので。
  • コロナ後の(以下略)は、Information、つまり広告記事なので、通常のBLJの企業担当者の座談会とは別物の提灯記事。こういう記事が増えている感もあり、そういう必要が生じていることの意味あいが気になるところ。
  • 知識創造法務の連載はSECIモデルの解説が興味深いが、費用対効果が不明な議論に見えるので、どこまでの有用性を見るべきものなのか、よくわからない気がした。費用対効果の面からも正当化可能でないと実現可能性・持続可能性がない机上の空論になるような気がするので。
  • 改正薬機法(以下略)の記事は、関係企業の法令順守体制について、結構細かく定めている印象。ここまでしないといけない事情があるからやっているのだろうが、大変そうな気がする。
  • 分配可能額を超えた剰余金の配当の記事については、会計監査人を分配可能額算定過程に関与させるべく立法すべきというのは、理解可能な反面、関与する側のリスクをどう考えるのか、責任限定とか付すのか、気になるところ*5

*1:気が付くとアマゾンのアフィリエイトが貼れるようになっているし、アマゾン経由では購入可能な模様。

*2:注記しておくと、この連載、当初は女性しか出てこないという著者にとってのハーレム状態だったのでこのような呼び方を当方ではしている。当方のコメントが影響したのか、最近は男性も登場するのだが…

*3:タイトルの長い記事が多すぎるような気もした…

*4:共著者で入っている某事務所の先生方についても、そういうプラクティスをしているとは知らなかったのでやや意外な気がした。

*5:粉飾決算とかが見過ごされる事例も考えると、気をつけないと事態を無駄に混乱させるのではないかという気がしないでもない。