出たときに「!」と思って、購入したが、しばらく積読だったところ、らめーん先生の呟きを契機に読んだので、感想をメモ。
はしがきの著者の保全・執行への愛情の横溢ぶりに、やや「引いて」しまったのが、本書を積読にしていた主たる要因なのだが、らめーん先生が「文章に謎のグルーブ感がある」と評されていたのに興味を覚えて、読み始めた。確かに、文章に謎のグルーブ感を感じて、一気に読めてしまった。こういう「読ませる」文章が書けるのは、それだけでもものすごいことだと痛感する(目を通さないといけない書物で、そうでない文章のものに難渋する日々を送っているから余計にそう思う)。
この分野での経験豊富な著者が、経験で培ったノウハウとヒヤリハットを30のルールにまとめて、架空の設例でそれぞれのルールを解説している。失敗事例については、何がまずかったのか、どうすべきだったのか、とともに、守るべきゴールデンルールが説かれていて、内容的にも分かりやすいし、随所で示されている実務の相場観は、慣れていない人間にとっては、参考になることが多いと思う。執行には意外と費用がかかるというのは、抑えておく必要があると感じた。僕も執行は、修習で一度、実務でも一度しか立ち会っていないが、執行自体は手間も費用もかかるということは、実際の現場を見ないとわかりづらいのではないかと感じるところ。
現下の状況が継続すると、資金的に行き詰る事例が増えて、倒産系の事案とともに、債権回収の関係で執行保全も増えてくるのかもしれないから、この機会に本書でこの分野の知識の補完を図るのも悪い話ではないのではないかと感じた。