一通り目を通したので感想をメモ。
大学で日本政治思想史のゼミ(演習)などを履修したこともあり、この分野には関心がないわけではない。それもあって、神保町の某書店で著者のサイン入りのものを見て買ったものの、長らく積読山に埋もれていて*1、読み終わって、このエントリを書こうとするまで、既に本書の改訂版が出ていたことにも気づかなかった(汗)。
放送大学のテキストというと、僕らの世代の元法学部生だと、岩波の芦部憲法の基になった「国家と法I」とかを思い出すわけだが、15回という放送回数に沿う形でまとめ上げるなどのフォーマット面での制約があり、かつ、既に同種の講義のテキストが出ているところで、著者ならではの特色あるものを作ろうとするのは、必ずしも容易なことではないのではなかろうか。
本書では、最初の3章(番組3回?)が総論として、日本政治思想史とは何か、空間と政治、時間と政治の関係が論じられ、その後は各論として様々なテーマが論じられている。著者の従前の著書を基にしていると思われる部分や、明示的に著者の書籍を参照するよう書かれている部分もあり*2、著者の著作入門になっているというamazonでの指摘にも納得できる。
内容的には、政治思想史として、年代としては江戸時代あたりからWWII後までカバーしており、どうしても近い年代の話の方が興味深く感じた。また、取り上げられているテーマも、天皇制や東京・大阪の比較、戦後の「アメリカ化」と「ソ連化」*3など、切り口が興味深かった。
他方で、著者の問題意識に即して、複数の視点から切り出したスナップショットをつなげて政治思想史として構成しているという感が強く、それぞれの主題間の相互のつながりが必ずしも見えてこないこともあって、通史を学ぶという印象があまり持てなかったのも事実。全体としての分量の制約もあるところでは、仕方がない部分もあるだろうし、テキストを読むだけではなく、講義も併せて聴いたら、多少は違った印象になるのかもしれないが*4。
ともあれ、気分転換ではないが、たまにこうした分野の本に目を通すのも悪い話ではないと感じた。