新版 若手法律家のための法律相談入門 / 中村 真 (著)

一通り目を通したので感想をメモ。若手弁護士*1は座右に置いておくべき一冊だろうし、企業内法務でも手元にあって損のない一冊ではないかと感じた。

 

新版、とあるとおり、評価が高かった旧版を改訂したもの。債権法改正などを反映するとともに、刑事事件への対応(被害者支援*2も含む)等について記載が追加されている。旧版を読んだときは、こちらは司法試験の受験生をしていた。その後、司法試験に合格し、司法修習や事務所のアソを経て、インハウスとなった今、改めてもう一度通読すると、旧版から継続する記載であっても、旧版を読んでいた時には気づかなかったり、意味合いが十分理解できていなかった(と今からすれば思う)ものがあり、こちらも、時を経て、多少は進歩したということを実感する。

 

よくある相談トピックのまとめ*3や注意すべき期間制限などのまとめ、期間の計算の仕方について、のあたりは、事務所の弁護士ではない、企業内法務(資格の有無は問わない)でも有用と考える。期間制限については、債権法改正前のものも出ており、事務所の弁護士、企業内法務いずれであっても助かると思われる。

 

相談への対応の仕方についても、企業内法務では、相談を断らないといけない場合というのはあまりないだろうが*4、それ以外のところについては、例えば、事前の準備の重要性、相談の結果として示すべき結論のレベル感、説明を間違えたときの対応*5、リスクやコストの説明の重要性等の記載は、参考になるものと考える。

 

文章も読み易く、分量も260頁余と程々にまとめられているので、一通り通読したうえで、座右において、必要の都度紐解くのが、本書の良い使い方ではないかと考える。そうした使い方に堪え得るよう、著者におかれては、引き続き、適宜のインターバルで本書の改訂を続けていただければと思う。

*1:若手の定義については諸説あるところ、修習期基準説でも極端主観説でも、本エントリでのコメントは変わりはない。

*2:当事者でない弁護士にできることの限界を踏まえた冷静な記載が、重要と感じた。

*3:企業内でも従業員から個人的な相談が来る場合もあり、そういうものにどこまで対応するのかは、時に判断が難しいことがあるが、実際に対応する・しないに関わらず、ある程度の方向感は持っている方が望ましいだろう。

*4:街弁ではその種の事態は相応にあるのではないかと思う。その際には、本書では、断り方の実例も載っているので、有用だろう。

*5:焦って対応を誤りがちなので、こういう形で記載があるのは、冷静さを失うの防ぐ意味で重要と感じた。