弁護士のためのPR(広報)実務入門─PRの考え方・平常時の活動から記者会見・ネット炎上対応まで/PR実務研究会 (編集)

一通り目を通したので感想をメモ。企業内法務の担当者の方々におかれては座右にあると有用な一冊と感じました。

 

最近は"Winny"の映画でおなじみ?の壇先生が関与されている(「はしがき」も書かれている)こともあり、購入してみることにした*1

 

企業でも、不祥事またはその疑惑が判明した際には記者会見などを行うことがあり、そういう際の対応の巧拙がその企業に大きな(主に負の)インパクトを与えることは、過去の幾多の事例が示すところと言える。そういう意味で、特に「有事」の際の対応について、企業内に一定の知見があることは望ましいと考える。

 

その種のノウハウは、企業内であれば、広報と言われる部署にあることが多いのではないかと思う。「平時」であれ「有事」であれ、企業の外部に対しての公式な窓口であるのがこれらの部署なので当然のことだろう。とはいえ、訴訟などに繋がる可能性があり、それが故に企業内法務として関与する場合には、これらの広報部署がどういうことを考えているか理解しておくことが、企業内法務としても重要であろう。そして、幸か不幸か、そうした部署が「有事」慣れしていない場合には、「有事」対応の部署の一つとして、そうした部署をサポートできるだけの知見を持っていることも望ましいことではないかと考える。

 

そういう意味で、企業内法務に従事される方々においても、本書を通読のうえ、いざとなったときに紐解いてアドバイスができるようにしておくことは、有用と考える。本文は140頁とコンパクトに纏められているので*2、通読は十分可能で読むのにも時間はかからない。説明は具体的な実例に基づいているので、想起しやすいし、著者の諸先生が関与された事例が「事例から」のコラムで挿入されていて、こちらも面白い(というと語弊があるかもしれないが)*3

 

*1:話はそれるが、かの映画でも壇先生も熱く、カッコよかったと感じたことはここに付言しておく。

*2:コンパクトすぎて、特に後ろの方のマーケティングの一般論とかは、これで何がわかるのかという気もするが、本書のメインは「平時」ではなく「有事」の対応であり、「有事」に紐解けるのはこの程度の分量でないと厳しいだろうから、本書で足りない不足するところは別書を紐解くべきだろう。そのための文献案内が欲しかったところではあるが。

*3:壇先生が、某芸能人の記者会見にどう望まれたのか、そして、その場に某監督似の某先生が何故いたのかというあたりは「壇先生は本当に弁の立つ方で。いろんな裁判を闘ってきている歴戦の猛者で、本当に手練手管を使っている方」という、かの映画で壇先生を演じられた方の言葉が脳裏をよぎって、納得した。