別ルートを用意する

何のことやら。呟いたことを基にメモしてみる。

 TL上で、大要、敷居の低い法務を目指した結果、従業員の個人的な法律相談までくるようになった、目指した方向性が間違っているのではないか、という呟きに接した。

 

こうした呟きに対しては、そういう結果が生じるのは、目指した方向性が間違っていることを示すものではなく、寧ろ、相談の敷居が下がっているから、方向性があっていることの証左とみるべきと感じる。そういう中からリスクの芽を見出す可能性もあるのだから。

 

他方で、そういう従業員の相談についてどう対応すべきか。会社の顧問弁護士に相談するのも一案*1かもしれないが、内容によっては顧問弁護士以外のところに対応を依頼すべき話もあるだろう。企業法務メインの先生に個人の相続や離婚の相談をしても、というようなこともあろう。そういう場合には、費用の話は別途したうえで、顧問以外の外部の弁護士につなぐという対応をすることになるのだろう。得意不得意とは別に顧問弁護士の業務に使う時間が有限であることを考えると、その種の業務にその弁護士さんの時間を使ってもらうのが自社にとっても適切ではないということも想定可能かもしれないし。

 

そういう意味で、企業内法務の立場からすれば、顧問弁護士など日常業務で付き合いのある弁護士事務所以外の事務所との接点も確保しておく方が良いということもあると思われる。

 

そうしたことの利点は、もう一つ別の形でも考えられる。代表訴訟のような場合で、役職員と会社との間で利益相反の可能性がありつつも、一定の共同歩調(事実上のものも含む)を取らないといけないときに、企業側がまったく知らない弁護士さんが役職員側に就くと、対応をしていく上で意思疎通に齟齬を生じる可能性もあるので、そうした可能性を排除する意味では、企業内法務の側が弁護士さんを紹介する(もちろん、当該役職員側の実際の対応についての判断は、企業のそれとは独立に決定されるべきである*2)というのも悪い話ではないと思う*3

*1:そういうところまで含めた形(EAPという形かどうかはさておき)で顧問契約をする先生がおられるのも理解しているが、まだ一般的とは言い難いだろう

*2:弁護士倫理上も対応に注意が必要なことがあることにも留意すべき。

*3:ある程度大きな企業の法務部で、そこから司法試験に合格して独立した人がいて、顧問弁護士などではない場合には、そういうところに話を持っていくというのは一つの手なのだろう。