月刊法学教室 2024年 04 月号

例によって目を通した部分について、呟いたことを基に箇条書きで感想をメモ。

  • 巻頭言は学びと顕彰というお題からして何とも言えないものがある。
  • 法学のアントレはテーマが留学。外国人流の考え方も備えた複眼の獲得こそが留学の意義との指摘には同意。語学力ゼロの留学とかはお勧めしがたいけど(僕なら怖くてできない)。
  • 特集はAIから法の世界へ。イントロの文章の後はAI入門。議論の前に対象について理解し定義しようとする感じがして、実に法律雑誌らしいというかなんというか。もっとも記事の内容がどこまで理解できたかは別問題(汗
    藤田先生の原稿の次の長島先生の原稿は、AIによる裁判の支援と代替の可能性。民事・刑事裁判実務への影響の鳥瞰というところか。
    中川先生の原稿は、刑事司法システムに求められるAIの支援。ご指摘は理解するけど、弁護人が言っても聞かないのにAIがいうと聞く、みたいな状態が現出したら、それはそれで問題のような気がした。これはPとJの問題だろうけど。
    黒川先生のはAIの行政意思決定関与の許容範囲。技術的にこういうことができるというのは想像できるが、その反面の副作用のようなものがどこまで勘案されているのかが気になった。
    前田先生の原稿は、生成AIの利用が著作権侵害となる場合。著作権侵害が生じる事例を限定的に考えておられるように見えて、賛成してよいのかにわかに判断がつかない気がした。
    黒崎先生の原稿は、技術はある種無色透明で使い方次第ということを改めて感じる。そこに枠をはめることができるか、が重要。
    西村先生の原稿は、法制事務の難しさを感じる。緻密さを求める点について某サービスとの比較があるけど、間違えに対する許容度が異なるとみられるところで適切な比較なのか疑問に感じた。
    特集はAIと法律の接点について、よくある特集よりも広めに話題を取り上げているように感じられて興味深かった。
  • 講座。
    憲法は統治を憲法の基本原理から見る、みたいなものらしい。メタなレベルの議論が続く。分かった気にもなれない(涙
    行政法は最終段落の記載が今どき何だろうけど切ない。
    民法は寄与度への批判が強いものの、必要性が高いと思われるところが興味深く感じる。
    会社法の時計は株主代表訴訟制度。制度の変遷の概説が興味深いが、中でも被告取締役側への会社の補助参加の正当化の論理が印象に残った。
    刑法は保護責任者遺棄致死罪の成否。不保護の故意についての議論の分かれ方とその理由の説明はなるほどと思った。
    刑訴は訴因制度。制度の変遷と民訴の処分権主義・弁論主義と対比したうえでの整理は興味深く感じた。
  • 執筆者が交代した演習。
    憲法は、集会とかデモへの制約の問題について、泉佐野市民会館事件などは想起されるものの、別の、援助や給付の問題として捉える方法への言及があるのが印象に残った。
    行政法は最近の某事件を素材に裁量論などを扱う。裁量統制の方法がどのようにして決まるのかが解説を読んでもよくわからない気がした。
    民法。94条2項類推か110条類推か、いずれにすべきか、設問事案との関係での説明になるほどと思う。こういう話あったなと遠い目をしてしまう。
    商法。定款所定の目的と会社の権利能力、商業登記との関係のあたり。登記事項は知っているべきという議論は、いちいち確認していられるか、という話との間でどう折り合いをつけるのかという問題があると思うのだが...。
    刑法。因果関係の議論。危険の現実化の理論での被害者の特殊事情の扱い方について、最判S46.6.17(刑集25.4.567)での判旨を基に説明しているけど、危険の現実化の理論がその頃からあったのかが気になった。
    刑訴。任意捜査の適法性のところ。最後に要点整理が付されているのが斬新。良いと思います。
  • 判例セレクト。
    憲法の年金切下げと憲法25条・29条は、解説での「最高裁が合憲性に全く疑問をもっていないと思われる事案での判断であることに留意が必要」という記載が印象に残った。
    行政法の刑事施設被収容者の件(詳細略)は、解説での、取られた判断枠組みについての説明が分かりやすく感じた。
    行政法辺野古代執行訴訟は、解説3の指摘は興味深く感じた。
    民法の将来賃料債権の件(詳細略)は、H13最判も含め、そういう論点あったよね、と思い出しつつ読む。普段の業務からは縁遠い分野なのでそうなる。
    商法の特別利害関係人の議決権行使と株式交換の無効事由は、やるべきことを相応にしていたようなので、まあそうなるよなという判旨。
    民訴の共同訴訟における訴え手数料の件(詳細略)は解説の最後での指摘に納得。
    刑法の非観護者における性交の件(詳細略)は、本罪を認定するハードルの高さについての指摘に納得。
    刑訴の違法収集証拠排除と証拠の管理は、解説最後での指摘が気になった。
  • 早慶合同ゼミのレポートは、いろいろ絡み合った題材についてしっかり検討しているのが分かって、すごいと思った。自分が学部生の頃だったら、仮に真面目に法学を勉強していたとしてもここまではできなかったのではないかと思う。