通りがかったブックオフで買ったものだが(汗)、一通り目を通したので感想をメモ。かなり個性の強い本で、相性が合う・合わないがはっきり出そうな本だが、その点に耐えて読むのであれば、有用な一冊ではないかと感じた。
企業の法務・知財部門で働きつつ、複数の著作を出されている著者が、過剰な著作権主張がなされた事例を取り上げ、背景とか事件の進展などを解説している。問題となった表現も見やすい形で掲載されており*1、事案の理解もしやすい。取り上げられている事例は、実務経験豊富な著者が選んでいるだけあって、どれもこれも、なかなか(あまり褒められた意味ではなく)独創的な権利主張に基づくもので、ある程度著作権法の弁えがあれば、主張自体しないのではないかと思われるものばかりで、無から有を生み出した著作者の思いは強いということなのだろう。それらを、ロジカルに斬っていく著者の論には痛快さを覚える向きもあるだろう。
ただ、切れ味が鋭すぎるというか、斬って捨てる捨て方の表現が、煽り強めの強調表示も相まって、やや癖が強すぎるように感じられ、個人的には、ちょっとついていけないものを感じた。この辺は人によって感じ方のわかれるところだろう。
とはいえ、その点を無視すれば、それぞれの事態の推移、当事者の応対の様子とその結果*2、それらに加えて、コラムに見られる著者の実務的なアドバイスから、企業の法務知財の担当者としては、得るものも多いのではないかと考える。
また、俎上に挙げられている事件のうちいくつかは、著作権法分野で著名な事件であり(江差追分事件や著作権判例百選事件*3など)、そういうものについて、周辺事情なども知ることで理解を深めることもできるのも有益かもしれない。
そういうところまで含めて考えると、合わない場合も我慢して目を通すと有用なところのある一冊ではないかと感じた。