事例に学ぶ著作権事件入門─事件対応の思考と実務/ 星 大介 (著), 木村剛大 (著), 片山史英 (著), 平井佑希 (著)

一通り目を通したので感想をメモ。著作権事件への入門書としては分かり易く、この分野の「最初の一冊」としては良いのではないかと感じた。

 

著作権に絡む相談*1も一定程度ないわけではないので、冬休みに読むか、と思って買ってみた一冊*2著作権法のおさらいという意味では積読山にある「標準著作権法[第5版]/高林龍」の方に目を通すべきなのだろうが、こちらの方がとっつき易そうなので先に目を通してみた。

 

本書は第1編と第2編からなっている。

第1編では、総論的に、事件類型、侵害事件への対応、権利侵害予防の法律相談、関連契約のそれぞれについて簡潔に解説をしている。フローチャートや主張立証構造などの図解が秀逸で、理解に資する内容となっている。

第2編では、各論的に、10のモデルケースで、弁護士と依頼者のやり取りや、書面類のサンプル、雛形、問題になった実例*3、ケースによっては、裁判例のまとめやJASRACの包括承諾済サイトの一覧、などを示しながら、事件類型ごとに対応の際に注意すべき点などが解説されている。ネット上にある資料についてはURLも脚注で記されているのも親切な気がする*4。全体として300頁余とコンパクトにまとめる都合上もあってか、事件対応は円滑に進みすぎている気はするが、基本的な対応の仕方を抑える意味では、現実同様の変なひねりを入れる必要はないだろう。10個のケースの選び方もある程度網羅的に事件をカバーするように選ばれている感があり、まるっきり同じ事件類型ではないとしてもある程度土地勘のようなものが養えるのではないかという気がした。

 

上記のような次第で、この分野に関する「最初の一冊」としては良いのではないかと感じた。あえてさらに何かを求めるのであれば、第2編の各ケースの後で、分野ごとに、さらに突っ込んだ話を調べるための文献案内が欲しいと感じたくらいか。

*1:研修資料に絡む話とかネットに動画や静止画を挙げるような話が多いか。

*2:諸般の事情で目を通し終わったのは休み明け初日の今日になったが。

*3:写真で示されていて、具体的なイメージがわきやすい。

*4:今時なら、どのみちURLを手打ちすると間違うし、検索すれば足りるから不要という見方もあるだろうし、それはそれで一つの考え方だが、SEOとかのせいで検索サイトで探し当てるのも手間なので、URLで示してくれた方が個人的には安心できる。