一通り目を通してみたので感想をメモ。著作権法を仕事で使うのであれば、間違いなく座右にあるべき本の一冊と感じた。
年末あたりに、思うところがあって、冬休みにはある程度まとめて著作権法の本を読もうと思ったものの、こちらの怠惰もあってなかなか進まなかった。その際に、高度な本だけど*1、ここまでは何とか目を通そうと思っていたのが本書*2。いきなり挑むと挫折しそうなので、何冊か間に挟んだところ、とりあえず最後まで挫折せずに目を通すことができた。
もともと司法試験受験生向けだったものを内容を改訂してできあがったということもあり、体裁も受験参考書めいたものを感じるところもあるが、それもあってか、冗長さを感じないのはいうまでもなく、砂をかむような感じもなく(むしろ対極にある濃厚さを感じたのだが...。)、どこまで理解できたかはさておき、着実に読み進めることができた。
初心者向けの「かったるい」説明はそぎ落とし、著作権に関して*3、実務レベルで遭遇しそうな論点を網羅的に拾って丁寧に解説しているという感じになっている。構成も著作権侵害の成否、著作権の帰属先の確認、著作者人格権侵害の成否、ときて、最後に各種の著作物ごとに存する特則や特別の法理を著作物のす種類ごとにまとめる、という形になっていて、著作権の全体像がつかみやすいと感じた*4。要件事実についての記載や判例の紹介も豊富で、関係する実務につくのであれば座右におくべき一冊なのは間違いないと感じた。願わくは、共著者の方々の協力も得つつ改訂を続けてほしいところ。
このシリーズは特許権についてのものもあり、こちらについても、目を通しておきたいとは思うが、特許法については、著作権法以上に知らないので、まずは、今度出る予定の田村先生共著の特許法講義に目を通してから、ということにした方が良いのだろう。願わくは、著作権法についても同様の講義を出していただけないかと思う。単著の概説*5が出てから20年以上経過しているので、さすがにそろそろ更新していただけないかと思う次第。