クスッと笑えて腑に落ちる 著作権法ガイダンス /白鳥 綱重 (著)

一通り目を通したので感想をメモ。優秀なレジュメに徹していて、この分野で最初に読むには良い一冊ではないかと感じた。

 

高林著作権法が、優れた本であることは重々理解してはいても、こちらとの相性が悪く、単体で読んでいても、頭に入ってこない感じがしたので*1、もう少し、こちらとして取り付く島のある感じの本に目を通した方が良いのではないかと考えて、丸沼等でいろいろ悩んだ挙句に手に取ったのが本書。文化庁の官僚の方*2の手による本書は、官庁の方の説明ということではありつつも、執筆時点では官庁におられなかったせいか、かなり砕けた感じで説明をしていて*3、説明も腑に落ちる感じがしたので*4、砂をかむような思いをした後だと、余計に印象が良い。強調表示の使い方や、重要な点を「ツボ」として再掲したり、要件を①②...でリストアップしたり、表を使っての対比を駆使しているところ等を見ると、大学の授業の要領の良いレジュメ兼講義録という感じがした*5。300頁ちょっとの分量なので、通読も十分可能。また、メリハリという意味では、学者の方であれば説明を端折りそうなところも、一通り説明をしている点は、いかにも所管官庁の方らしいと感じた。

 

(裁)判例への言及もそれなりにあって、索引などもそこそも充実しているので、内容を一読のうえ、手元に置いておくと、クイックレファレンスとしては使い勝手が良いのではないか*6

 

そんなこんなで、この分野の最初の一冊としては、良い本なのではないかと感じた。状況が許す限り、適宜の時期・間隔で改訂を続けてほしいと思う。

*1:これはひとえに、こちらの能力不足のことなのだが。

*2:執筆当時は大学で教鞭をとられていたようだが、検索するとどうやら今は文化庁におられるようなので、一時的に大学に出向されていたのだろうか。

*3:個人名の単著だからこそできることなのかもしれない。

*4:他方で、正直なところ、あまりクスッと笑うことはなかったけど。

*5:よりこちらの主観に即した表現をすれば、出来の良いシケプリの上位互換機、という感じだろうか。

*6:記載の根拠についても、脚注で典拠への言及が欲しかった気がするし、また、入門書という意味では、個人的には、この先への文献案内が欲しかったと思うが、他方で、そういうことまでやっていると、気軽に読み通せるという本書の良さを損なう可能性があるので、その辺りの匙加減は難しいと感じる。