アメリカ法への招待 / E・アラン・ファーンズワース (著), スティーヴ・シェパード (編集), 笠井 修 (翻訳), 髙山 佳奈子 (翻訳)

今更、という感もないではないが、一通り目を通したので感想をメモ。やや古いものの、アメリカ法入門の最初の一冊としては目を通しておいても良い一冊ではないかと感じる。

 

本書は翻訳で、原書は、コロンビアで契約法などを講じていたファーンズワース教授が外国でアメリカ法について行った講義が基になっている模様。翻訳の元になった版は著者逝去後に他の方がupdateされたものらしい。米国でもロースクール入学前に本書に目を通すことが推奨されるらしい。翻訳は日本の法学者の先生方がなさっている。200頁ちょっとの分量で文章も翻訳臭さはゼロではないような気がするが、読みにくいというほどではない。通読も容易。

 

全体を大きく2つに分けて、前半(概ね半分の分量)はアメリカ法の基礎をなす部分、歴史的背景や、法学教育、法律家、司法制度、判例法、立法制度、制定法、二次的典拠についての説明に費やされる。この辺りの複雑さは、外国法との比較でもアメリカ法の特徴的な部分だろうから、相応の分量が費やされるのは当然なのだろう。後半で、それぞれの法分野についての解説で、解説も、分類の話の後に、手続法と私法と公法に分かれて論じられている。前半の総論的な部分に分量が割かれていることもあり、各分野の解説は、相当浅め、という印象が残る。また、さすがに2023年に読むと記載が古いのではないかと思うところも相応にある。他方で、限界はあっても一応かなり網羅的にカバーされているのも事実。解説は浅めで古い部分もあるが、それぞれの分野について、参考文献などのリストが付されており、入門書としてはこの点の充実ぶりは特筆すべきと考える*1。専門分化が進んでいるはずのアメリカで、こうした書籍を、ほぼ単著で、専門分野での業績をあげながら、書き上げているのはすごい、とも感じる。

 

古いとはいえ、多くの部分、特に、前半部分の多くは、アメリカ法について知識を得ようとする際には、目を通しておいて良い内容ではないかと感じる。流石にそろそろ原著で次の版を出していただき、それを翻訳したものが出てほしいところ。

 

また、日本語で読むアメリカ法入門という意味では、本書や、阿川教授のアメリ憲法史の著作の後で*2、「基礎から学べるアメリカ法」に目を通すと良いのではないかと感じた*3。それぞれについてのこちらの感想をメモしたエントリを以下貼っておく。

 

dtk.doorblog.jp

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dtk1970.hatenablog.com

 

*1:「編者はしがき」を見ても著者がリストの充実を図るよう留意していた趣旨の記載がある。ただ、古いのが...。

*2:かの国における憲法の位置づけからすれば、「憲法で読むアメリカ史」だけでも最初に目を通しておいた方が良いと感じる。

*3:その先には弘文堂の一連のシリーズなどが続くことになろう。