標準 著作権法〔第5版〕 / 高林 龍

一通り目を通したので感想をメモ。堅実、という感じの一冊。

 

こちらは、JTCのメーカーの法務にいて*1、この会社では法務よりも知財が大きく、特許・実用新案・意匠・商標あたりは知財が所管しているけれど、著作権法については、法務で対応という役割分担となっている。そういうこともあって、著作権法については、一定程度業務上の接点はあるのだが、接点のある範囲はある程度限られていて、その範囲については、都度調べるなどして一定の知識は有しているつもりではある。しかしながら、それを超えた知識などがどこまであるかというと、正味ないに等しく(10年以上前に島並先生たちの入門には一度目を通したが)、さすがにそれもまずいかもしれない、と思って今回意を決して本書に眼を通してみた。全体で300頁程度なので通読もそれほど厳しくはない。

 

裁判官から大学教授に転じられた*2著者が法学部の講義案を基に書かれたのが本書で、同様のコンセプトで書かれた特許法の本と同様に、3年ごとに改訂され*3、こちらは5版となっている。3年ごとに改訂されているので、相応に内容が更新されているのも安心材料だろう*4

 

題名に「標準」とあるが、特に通説とかを中心にしているわけではなく、自説を述べられていると思しき箇所もあり、それは読者の興味を掻き立てる意図に基づくようだけど、こちらは興味を掻き立てられた箇所はそれほど多くなく、全体の印象としては淡々としていて手堅いというか、あまり面白みを感じられなかった。必要と考えたので一通り目は通したけれど。また、特許法との比較での解説もあちこちにあって、大学での知的財産法の授業であれば、両方を教えることが一定程度前提になるだろうから、ある意味で妥当なのだろう*5が、こちらのように実務との関係で読んでいて、特許法についてほとんど理解していないので、やや読みづらかった。堅実で優れた本ではあるのだろうが、個人的には相性が合わなかったという気がした。

 

 

*1:本エントリ作成時点。

*2:本書発刊後に定年を迎えられ、本エントリ作成時点では弁護士になっておられる

*3:あとがきの記載によれば、夏休みに対応されていた模様。

*4:もっとも、説明に出てくる例えとかがやや古く、僕らのような50代であれば理解可能であるものの、20代とか30代の方々に伝わるのかどうか、気になる箇所がいくつかあったのは気になった。都度都度改訂する形ではこういうところは改めにくいのかもしれない。

*5:同じ著者の「標準 特許法」を先に、または、並行して読むことが推奨されている。