財務3表一体理解法 「管理会計」編 (朝日新書) / 國貞 克則 (著)

一通り目を通したので感想をメモ。管理会計の「最初の一冊」には悪くないのかもしれない。

こちらの本の改訂版ということではあるが、本シリーズの既刊が財務会計の本だったのに対して、改訂の結果、本書は管理会計についての本という色合いが濃くなっている。財務会計も重要だが、管理会計も企業内においては同様に重要なはずなので、本シリーズで扱うことには相応の意味があるだろう。

 

予備知識についての第1章の後に、原価計算、予実管理、キャッシュフロー・マネジメント、投資評価について、それぞれ解説がなされ、最後の附章で事業再生における考え方についての解説がなされている。全体で200頁ちょっとの新書で、本シリーズの他の本と同様に文章も読みやすく、通読も容易。もっとも、この分量からして学べることには限りがあるとしても、管理会計とは何をするのか、ということについてのある程度のイメージをつかむという意味で*1、この分野の「最初の一冊」としては悪くないのではなかろうか。

 

個人的には、予実管理での著者が経営する会社での実例に基づく数値を示しての差異分析や、事業再生についての記載の中での利益対策のロジックツリーは、興味深かった。予実分析は、その意味や目指すところが理解されていないと、つまらないものに見えがちなので、数値を示して分析したうえで、何に着眼して手を打つことを考えるべきかの指摘があるのは良いと感じた。利益対策のロジックツリーでは、起きている事象に対してどういう手を打つべきか、その手がどう影響しうるかの因果関係が分かる感じがして良いと感じた。

 

他方で、例によっての著者のドラッカー推しについては、好みの分かれるところだろうし(個人的にはそれほど悪い印象はないが)、あと、上記のとおり、本書の立ち位置としては入門書的な立ち位置にとどまることからすれば、この後の「読書案内」はあってほしかったと感じる。

 

財務会計管理会計の基礎的な知識は、企業内法務の業務に従事するにあたっても、有用な知識というのがこちらの体感で、本書及び本シリーズでその辺りの知識を身に着けておくのは良いと考える。諸々の事態の推移に応じて適宜更新がなされて、長く読み継がれてもらいたいと思う。

*1:記載内容が管理会計の全体像を示しているのかについては、こちらの知見不足で判断しきれていないが。