財務3表実践活用法 会計でビジネスの全体像をつかむ (朝日新書) /國貞克則 (著)

3部作の著書の3作目。前2作を前提に、管理会計、事業再生、M&Aなどの場面での会計知識の使い方を解説している。実際のビジネスの中で、会計専門の部署ではないところで、会計的知識をどう使うか、という点の解説は有用な気がした。M&AのところでのDCFの解説とかはそもそも会計なの?ファイナンスというべきじゃないの?という疑問があるが、わかりやすさは前2作同様で読みやすい(特に前2作をきちんと読んだうえで、だと)。もっとも、前2作を読んでいない読者も想定しているのか(それはそれで必要なことだろう)、前2作の復習的な部分もあるので、その部分は、やや冗長な感もある。

 

事例をあげての解説は少ないものの、一つの事例は著者自身の会社での事例を使っての差異分析なのが興味深い。もう一つは、今読むと今は昔感があるが、オリンパス粉飾決算の大まかなスキームの解説(全体はそれなりに複雑なスキームなので、この本の紙幅で全体像を解説することには無理がある。)で、そういえばこういうのがあったなと、何だかずいぶん昔のことのように感じた。

 

前2作と異なり、著者のドラッカー推しとか、この3部作以外の著書への言及とかが目立つが、この辺りは好みが別れそうな印象。個人的にはそれほど不快には感じなかったが。

 

3冊通して読むと会計知識の理解を深め、活用へのヒントを得るという意味では、図示のわかりやすさ、複雑な計算もなく数学が苦手でも読める点、文章自体も平易、等の点から、会計系の専門部署にいない人にとっても、読んでいて損はしないのではないかと感じた。