研修のテキストで指定されたので、一通り目を通したもの。簡単に感想をメモしておく。
決算書の読み方という類の本は色々あるし、そういうものに目を通したことがないわけではないが、正直その手の本を読んだからと言って、決算書が「読める」*1ようになるとは俄かに思い難い。本一冊で何とかできるような簡単な話ではないと思うからだが。
本書についても、その疑念は適用されて、結局解消はされないのだけど、他方で、そういうことを言うだけでは、先に進まないのも事実なので、そういう意味では、決算書を「読もう」と思わせる本はそれ自体に意味があるという見方もあり得て、本書にはそういう工夫が随所にみられると感じた。その限りでは良い本ともいえる。
本書では、それなりに知名度のある企業の決算書と関連資料から、決算書の読み解き方を提示している。知名度があり、それなりに「読む」意味のある企業の決算書を提示していることで、「読む」気になる読者も一定数いるのではないかと考える。外部に正規のルートで公開している資料からこれだけのことが読み取れるという事実には、驚くものもあるが、他方で、読み解きの難しさも示唆されていると感じられ、おそらくは著者が示唆しようとしているよりは、ハードルの高さを感じた。
ともあれ、分析の解説や、図表のまとまり方には優れたものがあると感じたのも確かなので*2、決算書を「読み解く」ための最初の一歩を手伝う本としては良い本なのではないかと感じる。この本を片手に自分で「読む」行為を続けることで、分析する能力が付いてくるということはあるのかもしれない*3。個人的には、取り上げている事例を、定期的にup-to-dateなものに差し替えて、読者をひきつける内容であり続けると良いのだろうと思う。取り上げている事例が古いと、読者側も忘れていて、ピンと来なくなって、その分、親しみやすさが薄れるものと思われるから。