月刊法学教室 2022年 07 月号

例によって感想を呟いたことを基に箇条書きでメモ。

  • 巻頭言は、実に法学者・法曹にありがちな、間違っていないけど無粋な突っ込みというか連想で苦笑。

  • 法学のアントレは、図書館の楽しみ方。図書館好きとしては、いいぞもっとやれ、という内容だった。図書パン食べてみたい。

  • 法学を旅するは、地域独自の地方税(法定外税)の活用。法定外税の地域振興への活用も興味深いが、税法のゼミで地方税の活用を実際に自治体に提案するというのも、学習効果もありそうなうえ、面白そうに見える。

  • 判例セレクト。
    憲法の道警ヤジ排除事件第一審判決は、指摘の通り警察官によるヤジ排除を違法としたこと自体興味深い。解説末尾の指摘は、現下の状況だとその重要性が増している気がしてならない。
    特別地方交付税の額の決定取消請求事件については、法律上の争訟該当性について、所謂宝塚事件とは事案が異なるとして、法律上の争訟を認めた点が興味深かった。
    善管注意義務違反を認識しつつなされた取締役の行為とD&O保険については、解説末尾で指摘されている、免責についての十分な説明の重要性については、納得するところ。
    人身傷害保険委おける「人傷一括払」と自賠責保険の取扱いについては、交通事故の案件をやったことがないので、判決の実務的重要度がわからないが、影響が大きそうな気はする。
    賃料減額確認訴訟における既判力の範囲は、判旨は最初に読んだときに腹落ちしなかったが、解説を読んで納得。
    車内で死亡した者の死体を載せて自動車を走行させた行為と死体遺棄罪の成否の件は、検察官の控訴時の主張に驚く。検察官の主張に対する判旨はそりゃそうだろうと感じる。
    被疑者が出したごみの回収行為について令状によらない違法な捜索・差押えに当たるとされた事例は、司法試験の問題でこういうのあったよなと思い出して苦笑。
  • 演習。
    憲法。信教の自由。高校生剣道実技拒否訴訟、という言い方が、宗教中立的な表現で新鮮な印象というか、最初何のことかわからなかった(汗)。解説での当該判決の読み方は、なるほどと思う。
    行政法原告適格。設例に対するあてはめの解説、特にX2について、如何なる事実を主張すべきか、という点の説明が興味深かった。
    民法。賃貸借契約の解除に関して。現行法上の契約解除規定と信頼関係破壊の法理との関係の解説が個人的には興味深った。
    商法。qが「モグモグ」していたのがプライドポテトかどうか、及び、ドS先生が、TL上におられる某先生と関係があるのかが気になった。206条の2に関する議論は考えたことがなくて(汗)、興味深かった。
    民訴。重複起訴の禁止と相殺の話。H18最判が技巧的すぎて評判が悪い(当然だろうと思う)のに対して最判R2.9.11(民集74.6.1693)で別の手を考えているのは、認識していなかった(見たかもしれないけど.見たとすれば.忘れたのかもしれない(汗))。
    刑法は、緊急避難、特に強要緊急避難について、強要緊急避難については、そういう論点があることすら知らなかった(汗)ので、なるほどと思いながら読む。
    刑訴は令状による捜索が可能な範囲のあたり。何だかこういう事例が本試験の過去問にあったような。会社の社員用のロッカーについては、総務がスペアキーなどを持っていることが多い(でないと社員が鍵をなくしたときや失踪したときに困る)と思うけど、その辺りは検討しなくてよいのかと疑問。
  • 講座。
    憲法。事例問題の対処の仕方について、思考の流れを文章化する形での解説は有用な気がするけどどうだろうか。北方ジャーナル事件判例の射程についての説明も興味深かった。
    行政法原告適格。丁寧な解説。小田急線事業認可事件で原告適格が認められた住民の範囲について地図で示されていたのが、この辺り出身の者としては印象的。
    民法というか家族法。妊娠と出産に関する話。歴史的な経緯の解説が興味深い。学部の演習でお世話になった先生の新刊への言及があり、積読のままになっているのを反省(汗)。もっともそれ以前の本も積読のままなんだけど。
    商法。商法12条の現代化について商法と知財の先生で共同執筆というのが良い。個人的には存続論の方が良い気がした。
    民訴。訴状等の送達・第1回口頭弁論期日。この回で説明すべきことと他の回で論じるべきこととの峻別や丹念に条文を引いてくれているのが良い。
    刑法。読んでいて眠くなったので一旦後回しにした。実行行為途中からの責任能力低下は、受験生の時にも接した話題だったが、何を学んだかそもそも思い出せない。著者の論述の仕方が、合わないのと、こちらの不勉強もあいまって、読みづらかった。他説を排斥するのに、この部分の理由付けがない、という言い方をしているのを見たけど、理由付けが存在し得ないということではなく、単に説明がないというだけであれば、それをもって、その説を排斥して良いのか違和感があった。
  • 時の問題へ。「オンライン議会」の話は、「出席」の意味と「代表」の意義についての解説部分は、個人的にはすごく読みごたえを感じた。これはこちらがもともと政治系だからかもしれないが。この辺りは本稿の後ろのほうでも触れられているメタバースを使った場合にどうなるか、も気になった。個人的には、適法な開会要求に与党側が不当に応じない道をつぶす意味で国会のオンライン開催を活用できないかと思う。不当な拒絶については、被選挙権の停止などの形の制裁を入れるべきと考える。適用な要求に応じないというのは議論による政治を拒絶するわけで、それを拒絶するなら、そもそもいかなるレベルであれ議員になるべきではないと考えるので。仮に何らかの改憲をするならその点は対応すべきと考えるので。
    著作権を侵害しないSNS投稿の基本と主要な事例解説は、主要なSNSでどうすべきかが、裁判事例を踏まえて解説してあり、SNS利用者にとっては読んでおいて損はないと感じた*1

  • 特集へ。
    インターネットに時代における名誉・名誉感情侵害については。「炎上」に関しての解説が面白かった。アスベストの事件の議論を炎上の議論にあてはめる部分は特に。
    高齢者の建物賃貸借は、こちらも50代なので、ううむ、と思いながら読む。高齢化社会の中で住むところの確保をどう行うかというのは難しいと感じる。
    同性婚」に付与されるべき法的効果は何か、は、婚姻の法的効果(民法上の)のリストアップがまず興味深い。諸外国との制度比較も、それぞれの文化の差異が反映されているようで興味深く感じた。
    デジタルコンテンツの供給契約は、民法側からどう見えるのかという観点からの解説というところか。契約の解除と原状回復のところは、考えたこともなかったので、なるほどと思いつつ読む。
    デジタルプラットフォーム上の取引と民事責任の記事は、デジタルプラットフォームを利用した取引における問題点に民法に基づく議論でどう対応するかという点が興味深いが、個人的にはDP経由の食べ物のデリバリーは頼まないほうがいいとあたらめて感じた(今まで利用したことはない)。
    今回の特集は、デジタル・インターネット寄りではあったものの(20代とかを主読者層とするのであれば適切な判断なのだろう。)、民法と日常とのつながり、を実感させる良い特集だったのではないかと感じた。

     

*1:某萌渋でこちらに歌えというネタなのか何なのかわからないリクエストに接するがこの記事を読んで権利処理をどうする気なのか検討いただいてから呟いていただければと(謎汗