法学教室 2022年 11 月号

目を通した分の感想をメモ。

  • 巻頭言の森田先生の契約不適合責任の主張立証責任と時的区分は、目的物の引渡ないし買主による受領の前後で契約不適合についての立証責任が転換されるというのは、言われてみると、なるほど確かにそうなるなと思った(汗)。
  • 法学のアントレは、書くことについて、「寝かせる」ことの意義やその難しさには納得。「寝かせる」時間が取れるくらい前に書き終わらないといけないのが何よりも難しい気がする。
  • 法学を旅する、は性犯罪における加害者対策。不勉強でこの分野の最新の状況を知らなかったが、問題点はあるものの相応に進展していることが分かった。
  • 時の問題は、広告表示の「ウソ」。平山先生が筑波に移られているのに気づく。景表法周りはB2Bの会社にいるとどうしても縁遠いと感じる。
    もう一つはステーブルコインと暗号資産、電子マネーの現在地。この手の話に興味がないので、分かるようで分からない感じがした。とりあえず、スイカ決済以外は、どうしてもという必要が生じない限りは極力近づかないほうがいいと感じた。生兵法は大怪我の基。
  • 判例セレクト。
    憲法の事件は、解説での非嫡出子の相続分をめぐる対立との類似性を指摘しているところが興味深い。
    行政法福島第一原発事故国家賠償請求事件については、解説での原発の安全規制についての2つのモデルの紹介が興味深い。
    民法の給水停止による損害賠償責任を免責する条項については、民法の一般原則の特別法による修正の事例として面白い(という言い方が良いのか不明だが)と感じた。
    民法ツイッターの削除請求の件(長いので省略して表示)は、判旨で示される削除を認める判断基準が興味深い。
    商法の倒産危機時期における取締役の義務については、正味の紛争の所在についての解説における指摘や解説2の最後の文での指摘に納得。
    民訴の親子関係不存在確認の訴えについて、確認の利益を認めた事例は、この事実なら認めるのは結論としては納得だけど、法定相続分に影響が出れば常に確認の利益が認められるのか、認める限界のようなものがあるのかが気になった。
    刑法の不作為による放火罪の成否と作為との同価値性判断は、解説での同価値性判断の果たしている機能についての指摘が興味深く、指摘には納得。
    刑訴法の還付請求権の行使について権利濫用の法理の適用を認めた事例は、最高裁判例として最初のものというのがやや驚く。性犯罪がらみでこの種の判断は既に出ているものと思っていたので。
  • 演習。
    憲法は、31条と行政手続きというあたり。31条周りは合格した年に出ていたはずで、準備ができておらずに司法試験本番で焦ったのを思い出した。
    行政法の演習は仮の義務付け。論じ方の説明が丁寧で分かりやすく感じた。仮の義務付けのところは碌に理解していないことも確認できた(汗)。
    民法は請負契約周りで、建物未完成時の所有権の帰属とか、下請負人をめぐる法律関係とかそのあたり。実務で出くわしたことはないが、一応理解も記憶もしていたので安心。
    商法は、フライドポテトの話がないのは納得がいかない(違)。利益供与の話で、IR会社を使って株主一般への広報をすることが利益供与に当たらないかという検討が面白かった。
    民訴は、不祥事の調査委員会報告書と文書提出命令。設問の事案からすれば提出が認められるだろうと思ったら、そうならない可能性についての解説での指摘が興味深かった。
    刑法は詐欺罪における「財産上の損害」その他について。解説から見て、設問の事例が良くできてると僭越ながら思う。
    刑訴は違法収集証拠排除のあたり。パンツの中に覚せい剤というと、どうしても勝新太郎を思い出してしまうのは我々の年代としては仕方のないことだろう。
  • 新法解説/民事訴訟手続のIT化は、ジュリストの特集を読んだ後だとよい復習になる感じがした。
  • 特集は市民生活と民事訴訟との交わり。冒頭の松下先生の説明で、取り上げたテーマについて、取り上げた理由が書かれており、なるほどと思う。
    訴訟と非訟は、両者の区別の解説はなるほどと思った反面で、明確な切り分けは難しそう。具体的な内容を家事審判手続きを題材にして解説したのは妥当なのだろう。その他の非訟手続はイメージしにくいだろうから。
    人事訴訟は、特徴的な部分のハイライト的な解説で、事例を使った説明が分かりやすく感じた。
    管轄は「裁判所」という言葉に複数の概念が含まれるのがどうも腑に落ちない。別の言葉で語ればいいのに。
    証人尋問については、証人視点で整理するとなるほどこうなるのか、という感じがして面白かった。
    略式手続は、正味は支払督促について。その役割や理論的な基礎の解説は面白かった。特に、争いのない事件の審理に裁判所のリソースが使われるのを防ぐ機能の指摘は、元Jの著者らしいなと興味深く感じた。
    特集は、冒頭の松下教授のコメントにもあったように、受験勉強時にはあまり厚く扱われないところについて重点的に解説していて、通常の学習の補完としては有用なのではないかと感じた。
  • 判例クローズアップは在外邦人国民審査権訴訟上告審判決。国民審査の派生的機能に関する指摘が興味深かった。
  • 講座。
    憲法香川県ゲーム規制条例を素材にした問題演習。論証の難易を踏まえての判断枠組みの検討の部分は、なるほどと思いつつ読む。
    行政法。様々な抗告訴訟の鳥瞰というところか。某ぱうぜ先生の義務付け訴訟の本が初学者向けに勧められていた(日本法部分のみだけど)のにやや驚く。
    民法。生殖補助医療を考える。技術の進歩がもたらしたカオスのような現状の紹介に驚く。生命に手を加える行為は単純に怖ろしいと感じる。法律で対応できる部分だけでは足りず、倫理が必要と感じる。
    商法。交互計算をめぐる立法上の課題。交互計算自体ほぼ初めて接する話だったので、どこまで理解できたか怪しい気がする。
    民訴。共同訴訟。当事者が複数の場合の解説の序章的な位置づけか。丁寧に腑分けして、話したいことだけを話せるようにしていて、解説もわかりやすくて良いと感じた。
    刑訴。検察修習を思い出してなるほどと思いつつ読む。きれいごとっぽい感じがして検察の人の文章だなとも感じる。
    刑法。共同正犯で、一部実行全部責任の原則の根拠。こちらの勉強不足も相まって、この著者の先生の文章は理解しづらい。連載の終了を待つことにする。