呟いたことを基に、感想を箇条書きでメモ。
- 巻頭言は、身近な自転車問題を素材にルール違反をどのように減らすかについての指摘がなるほどと思わせてくれる。
- 法学のアントレは、文化芸術基本法という法律の存在自体知らなかったが、紹介されている、法から文化政策を考えるアプローチは興味深く感じた。
-
特集は、司法は人を救えるか、というもの。最初の飯田先生の論文は趣旨説明を兼ねたもので、水俣病訴訟と津波訴訟の実例が扱われている。両訴訟における裁判官の動きに焦点があたっていて、具体的な事案における被害者救済という意味では適切なんだろうけど...と何だか微妙な気分が残る。
小川先生の論文は憲法と取消訴訟の原告適格論。リベラリズムからの検討は、最後にある林地開発許可事件判決の調査官解説への批判も含め、興味深く感じた。
秋葉先生の論文は、国籍法違憲判決を中心に法社会学の観点から政策形成訴訟を通じた救済について解説。民事訴訟が本来想定している訴訟の利用方法とは異なる部分のある政策形成訴訟の弊害のようなものはないのかというあたりが気になった。
中尾先生の論文は「国賠訴訟を通じた救済を得るための最も本質的な要素は法的利益の侵害である」という指摘とその解説(それゆえの限界の指摘も含め)になるほどと思う。
中川先生の論文は司法での救済が果たされた事件に関与された立場からの経験が書かれている。やや感情的な気もして、この辺は好みが分かれるのかもしれない。
特集は司法で救済がえられることもあるが、ハードルは相当高いという印象が残った。それを下げるべきか、下げるとしてどうやるか、みたいな話はさすがになかったが。 - 国会概観の212国会の主要成立法律は、こういう法律が通ったのか、という確認に有用な気がする。国立大学法人法の改正の紹介のところでは大学の自治との関係についてどういう検討などがあったかとかの話がないのは、何らかの意図が背後にあってのことかと勘繰りたくなる。
- 法律案の「一括化」と憲法は、一括化に伴う問題点を意識したことがなかったので、なるほどと思う。特定の政権での多用が始まったように見受けられる点については、ある意味で納得しやすいところと感じた。
- 講座。
憲法。民法の除斥期間の検討に憲法を入れ込むということは考えたことがなく、読んでいて面白く感じた。
行政法はで沖縄返還 『密約』情報公開請求事件の各審級の判決から学術会議会員任命拒否問題を考えるアプローチが読んでいて面白かった。
民法は724条1項の短期消滅時効の起算点について。何をとこまで「知る」必要があるのか、という点につき、権利行使の現実的期待可能性の確保という観点からの検討は興味深く感じた。
民訴は最終回でIT化後の民事訴訟手続。理屈の上ではうまくいきそうにも見えなくもない。普段訴訟にかかわらないから現時点の運用は体験していないが、そもそも政府のやるIT化周りの諸々を信用できていないので、話半分くらいで受け取るべきなのだろうと思う。
刑法は包括一罪の成否で、最決平成26・3・17刑集68巻3号368頁について、過去の判例の延長線上に位置づける分析は興味深かった。ただ、被告人側は防御がしづらそうと感じた。
刑訴は起訴裁量主義。「行政機関の処分として、検察官の起訴裁量の余地についても、透明性と説明責任を論じる余地はあるだろう」という指摘には納得。 - 演習。
憲法。最後に平和主義の話。対処法に関しての最後の指摘には賛成。
行政法は最後のまとめ的な問題。いろいろなことをすっかり忘れている(言われるとそういうのあったねと思い出す程度)ことに気づく。
民法は日常家事と110条、利益相反と代理権の濫用、といったあたり。そういう話あったよなとは思い出す程度。
商法は会社分割と労働者保護(承継法のあたり)と濫用的会社分割と債権者保護というあたり。後者については、まだ裁判例はないのだろうか。
民訴は訴えの変更や反訴というあたり。予備的再反訴という言葉が出てきて驚く。まあ、予備的反訴がありなら、ありなんだろうけど。
刑法は危険運転致死傷罪。模擬裁判でのやり取りを通じた本罪をめぐる問題点の指摘になるほどと思う。
刑訴は違法収集証拠排除。最高裁R4判決下での東京高裁R3判決を維持する方法についての指摘は重要と感じた。
レポートは国際法。文献の芋づる的な紹介は興味深いが、指示に従ってレポートを出そうとすると結構な負荷がかかるので、履修科目が多いと大変なこ都になるのではなかろうか。 - 判例セレクト。
憲法と行政法はともに「宮本から君へ」事件を取り上げている。憲法での記事の解説における1審、2審と最高裁の判旨の比較や最後の注意点の指摘は興味深い。行政法の記事での裁量審査の観点から判決の特徴の分析も興味深く感じた。
民法の特別寄与料の負担割合と遺留分侵害額請求は、制度自体を知らなかった(汗)。本決定については、論理を詰めるとそうなるのかなという印象。
商法のデッドロック状態の株式会社におえる解散の訴えは、解説での833条1項1号該当性の検討が興味深かった。
民訴の本人訴訟を提起した拘置所に収容されている死刑確定者の不出頭と訴えの取り下げ擬制は、訴訟代理人の選任に法律扶助が得られることとかについて、死刑確定者のにどこまでの法的な弁えがあるのか不明確なところでは、同人に酷すぎる結果になっていないかと感じた。
刑法の自動車事故における過失の判断は、まあ、そうなのかなという程度(自信なし)。
刑訴の退去強制と検察官調書については、検察官が絶えず供述者の動静を監視して国外退去可能性を吟味する必要はないようだけど、常にそれでいいのかは疑義があるような気がした。 - 最後の大学間交渉競技は、今どきの学生さんたちが如何に勉強熱心かということに驚かされる。