月刊法学教室 2023年 05 月号

例によって呟いたことを基に箇条書きで感想をメモ。

 

  • 巻頭言は、会社法の先生はこういうだろうな、という以上の感想はない。

  • 法学のアントレは、西洋法制史と裁判事例。引かれている事例は、歴史的文脈まで踏まえると確かに興味を引くもので、この分野を学ぶ面白さの一端を垣間見たような気がする。

  • 学校をホウガクするは多様性について。この辺りは自分が学生だった頃には意識されていなかった話なので、軽々なことは言えないと感じるが、学校側の負担も相応にあるし、学校関係者の理解の仕方にも濃淡があるだろうから、対応が難しいと感じる。
  • 特集は、憲法もう少し聞きたい現代的論点。小島先生の全体を鳥瞰した文章の後に、家族と憲法の西村先生の文章。同性婚を認めないことの違憲性について。立法裁量の議論の避け方が個人的には面白かった。最後の一文はやや言いすぎではないかと思ったが。
    放送と憲法は、インターネット経由のメディアが有力になった中で議論がどう変わっていくのかというか、これまでの議論の成り立つ余地が減っていくのだろうと思ったのだけどどうなんだろう。
    知的財産権憲法、は、この両者の緊張関係とかを明確に意識したことがなかったので(汗)、なるほどと思いながら読む。
    学問の自由と大学の自治は、ここしばらくの政権の行為により、両者ともその基礎が掘り崩されている感があるので、興味がある内容だったが、学者や大学というところから、縁遠い方々とその価値についての認識を共有することが重要なのではないかと感じた。
    平和主義の原稿は、この分野は試験に出るとは思ってなかったし、条文解釈論については正直関心が薄かったので、初めて読む(受験生の時に読んだのかもしれないが既に記憶にない)話だった。
    比較憲法の学習の面白さは、比較憲法という分野自体を認識していなかったので、そういうものかという程度の感想しかない。
    特集の内容は確かに受験勉強との関係で深入りされないと思われる分野についてのもので、こういう特集でなければ接しない話が多く、個人的には面白かった。
  • 時の問題の日米の解雇規制等の話は法律論はそうなるんだろうなと感じ。個人的な経験の範囲での話でしかないが、法律論以前に、米系日本法人だと退職勧奨などの際にきちんとお金を出すなどすることが多いからもめる確率が少ないとかそういうあたりも踏まえないと理解がおかしくならないかと気になった。
  • 講座。
    憲法の学習指導要領と教育の自由については、旭川学テ事件くらいしか知らなかったので、なるほどと思いながら読む。地方ごとの差異を許容する部分の議論は面白く感じた。
    行政法行政法の基本原理に基づき外国籍公務員管理職試験受験拒否事件について論じたもの、というところか。行政法の基本原理に照らした分析を興味深く感じた。
    会社法の時計は、会議体としての株主総会に関する規律。特定の問題事象に対応するための法の規定を、その目的を終えた時にどう扱っていくかという問題と特定の事象以外への対応をどうするかという問題があるように見えた。会議体としての総会をどう考えるかで答えが変わる話なのかもしれないが。
    流れをつかむ民事訴訟は訴訟上の和解等(詳細略)。訴訟のない会社のインハウスなので、すっかり縁遠くなった感じがある内容。「流れ」がわかりやすく感じた。文章が読みやすくて良い。
    近時の判例で学ぶ刑法は殺人罪における未必の故意最高裁判決までの3つの判決を比較しているのを見ると、判断の難しい部分のある事件だったことを改めて認識する*1
    刑事訴訟法フレームワークを考える、は当事者主義。民訴法との比較が個人的には面白かった。証拠開示を巡る話は別途、ということのようなので、それらにも期待。
    検察実務から学ぶ刑事手続の基礎は、最終回。ご都合主義的なところはあったけど、手続の流れの基礎的なところを抑えることに注力したと考えるとやむを得ないのだろう。
  • 演習。
    憲法。事例問題の解き方のうち、権利自由の捉え方と制約の捉え方の説明はわかりやすく感じた。
    行政法。こちらも事例問題への向き合い方の説明が主だけど、何回かに分けて解説する際の解説の分割の仕方が憲法のそれと異なっていてその違いが興味深い。
    民法。物権的請求権。前半はある意味で「ベタ」な感じのする事例で、こういうのやったなと思いつつ(でも内容は思い出せず)読む。後半の所有権の放棄の議論は最近の改正も踏まえた議論でなるほどと思いつつ読む。
    商法。属人的定めとか株式併合とそれらの限界について。属人的定めについては、普段意識しないのでそういうのがあることも失念していた(汗)。
    民訴。債務不存在確認訴訟と反訴とかのあたり。ある種定番という感じで、まあ、そうなるよねと思いつつ読む。
    刑法。クロロホルム事件を素材にした感じで実行行為の着手周りのお話。早すぎた結果の発生を単なる因果関係の錯誤ではないとする説があるのは認識していなかった。
    刑訴。麻薬探知犬を居宅外で使用したことに始まる問題について。色々な議論の仕方が想定可能であることに改めて気づく。
  • 判例セレクト。
    憲法の2021年10月の衆議院総選挙における投票価値較差の合憲性は、解説でのアダムズ方式についての評価が興味深かった。
    行政法プロバイダ責任制限法と改正後省令の効力発生時期は、改正後省令に即時効を認める根拠についての解説での読み解き方がなるほどと思った。
    民法精神科病院設置者の説明義務は、この件で説明義務についてどういう意味を持ちうるかの解説はなるほどと思った。
    商法の取締役会による取締役退任慰労金の減額支給決定に対する損害賠償は、解説でのY2の善管注意義務違反を認めた判旨への批判が面白かった。第三者委員会の報告書を勝手に会社側が色々判断していいのかという(それをやるくらいなら第三者委員会の意味はどこにあるのか?)という点が疑問に思われた。
    民訴法の子の引渡しを命ずる審判を債務名義とする間接強制の申立てが権利の濫用に当たらないとした事例は、法令改正を挟んでいることもあり、過去に権利濫用とされた事例との差異が何処にあったのかよく分からなかった。
    刑法の詐欺幇助罪の成立が認められた事例は、色々な怪しげ?な要素の積み重ねがあって罪が認められたように見え、そういうものがないところでは罪を認めづらいだろうなと感じた。
    刑訴の任意同行中に、弁護人との電話連絡を制限したことに弁護人依頼権を侵害する違法があるとされた事例は、違法は認めている点は納得だけど、因果関係なしで証拠排除を否定しているのはやや疑問な気がした。

 

*1:内容をどこまで正確に理解できたのかは怪しいが