月刊法学教室 2024年 05 月号

例によって、呟いたことを基に感想を箇条書きでメモ。

  • 巻頭言は、「新二重基準論」は何かと思ったら、そこか、というところ。鵜飼憲法岩波文庫版は積読山のどこかに埋もれているはず(汗
  • 法学のアントレは、留学の四季と題する文章。まがりなりにも留学経験をしているせいか、なんとなくわかる気がした。
  • 今年度の特集のテーマは「基本原理・重要概念の再検討」で本号は憲法
    小島先生のイントロの後は、愛敬先生の公共の福祉について。指摘のように答案とかではつなぎのマジックワードにしていたような気が(汗)。
    榎先生の平等については、最近の事例を基に平等について再確認する意図とのことだけど、出てきた事例で関係する事柄が網羅されていたのかはよくわからなかった。ヘイトスピーチ規制との関係の議論は個人的にはなるほどと思って読んだ。
    西山先生の国家と宗教については、政教分離でいう分離とは何かというあたりの議論が興味深く、なるほどと思いつつ読む。
    二本柳先生の民主主義については、討議民主主義の説明が興味深いが現状の日本ではそれもどこまであるのか、懐疑的にならざるを得ない気がした。
    青井先生の「人権+平和」をどう実現するかについては、ここしばらくの状況も考えると「おわりに」での指摘は重要と感じる。
    特集は通常の憲法の受験勉強とかではそこまで戻って考えることがしずらいかもしれない基本原理・重要概念に立ち戻って検討していて、読み物としては面白く感じた。
  • 判例クローズアップは法的性別と性自認の件で、非訟事件であることの影響についての指摘が個人的には興味深く感じた。
  • 時の問題は現代的事例から学ぶストライキストライキ自体が今どきあるのかという気がしたが、状況次第ではあり得ることが一応理解できた。
  • 講座。
    憲法の「憲法」と「立憲主義」は古色蒼然とした感じもするが、現代的意義もおそらくあるのだろうと思うことにする。受験生の頃だったら読まないだろうな、この連載。
    行政法行政不服審査。行政庁内部での審査の実効性ってどこまであるんだろうと疑問。最後に記載の判例研究の意義についての論争は知らなかった。
    民法不法行為における相当因果関係。話にどこまでついていけたのかは不明だが、議論が錯綜しているのだろうということは何となく感じられた。
    会社法経営判断原則のこれまでの歴史は興味深かったし、歴史を踏まえてのH22最判の判断枠組みの意義の指摘はなるほどと思いながら読んだ。松井先生のこの連載は個人的にはすごく面白い。なぜそう感じるのかよくわからないが。
    刑法は傷害の意義。PTSDが傷害に当たるかと言えば当たるということになるだろうけど、その先の議論にはなかなか難しいところがあると感じた。
    刑訴は証拠開示制度。背景や経緯の解説は興味深い。課題として指摘されている2点はいずれについてもなるほどと思う。
  • 演習。
    憲法はステップアップでの質問は、そう来るか、と思って見る。
    行政法は行政指導の限界?のところは規範が微妙で何だかすっきりしない印象が残る。
    民法は110条と94条2項の組み合わせでの処理とか問題でよくみたなあと謎の感慨を抱く。仕事では見たことはないけど。
    商法は会社の設立。設立費用の帰属に関する3説の紹介が興味深かった。2番目が良さそうな気がしたが解説を読むと1番目の説の方が良いようにも見える(単純)。
    民訴は既判力とか一部請求とか。「定規」としての方の使用順序に留意を要するものとして信義則を挙げているのは、説明の仕方として分かりやすいと感じた。
    刑法は正当防衛とか量的過剰防衛と行為の一体性の有無等。行為の一体性の判断は迷いそう。
    刑訴は職務質問と所持品検査。参照判例と設例事案の事実関係の差異に気づかずに読んで、やられたと思うなど。
    レポートの社会保障法は、実際解説にあるとおりにレポートを書くと大変そうに見える。学生の時にこんなにまじめにレポートを書いた記憶がない(駄目)。
  • 判例セレクト。
    憲法の旅券発給拒否処分と海外渡航の自由は、旅券法13条1項の趣旨の理解の仕方からすればそういう結論になるよな、と納得。
    行政法の行政上の強制徴収と訴訟による請求との関係は、解説での訴訟の必要性の説明に納得。
    商法の弁護士の資格を有する取締役が負う善管注意義務の程度は、解説最後のスキルマトリックスとの関係についての指摘になるほどと思う。
    刑法の逆送の件(詳細略)は、そりゃ逆送は危ないからそういう判断になるのは当然かもねと思う。
    刑訴の名張毒ぶどう酒第10次再審請求事件は、再審へのハードルが高すぎるのではないかという気がした。