例によって呟いたことを基に箇条書きで感想をメモ。
- 巻頭言は、ハイブリッド授業について。先生側も準備が大変そうなのがわかる。
- 法学のアントレ。メリハリのある法律の文章についてだが、最後の一文が重要と感じた。
- 法学を旅するは、神戸市認知症事故救済制度(神戸モデル)について。立案にも関与された窪田先生の問題意識には納得する。確かにこれは国レベルで対応すべき話と考える。
- 特集は国民と刑事手続の関わり。川出先生の趣旨説明に続いて星先生の防犯カメラと刑事手続についての原稿。警察の防犯カメラが全国2000か所以上にあるとは知らなかった。
ついで平山先生の検察審査会制度についての原稿。検審のダークサイドの指摘が興味深かった。指摘されている被疑者の防禦権の充実の必要性は理解するものの、同時に起訴されることによるスティグマ対策も必要なのではないかと感じた。
三番目は朝山元Jの裁判員裁判についての原稿。裁判員裁判の影響として挙げられている中で、公判審理において、被告人の供述調書の重要性が低下しているとの指摘は興味深かった。
四番目は阿部先生の犯罪被害者の刑事手続への関与についての原稿。当事者主義との関係は、確かに、言われてみるとわかるようで分からないと感じた。今後何らかの整理がなされることを期待すべきなのだろう。
最後は安部先生の交通事件の手続。普段、車とかを運転しないのでこの辺りは関心がなく、なるほどと思いつつ読む。略式手続が抱える手続的問題点の改善は、国のリソース節約の目的との兼ね合いが難しいのではないかと感じた*1。
一般国民が犯罪を行った者以外の立場で関わる刑事手続という特集の切り口は、興味深かったし、いずれも司法試験までのところではあまり取り上げられないところなので、こういう機会に各原稿に接したのは個人的には有意義と感じた。 - 新法解説一つ目は自由刑に関する法改正。フォローできていなかったので、ありがたい。刑事政策的な議論に接したことがなかったので、興味深く読む。
二つ目は侮辱罪の法定刑引き上げ。個人的にはインターネット上での誹謗中傷に固有の侵害性に応じた別の刑法上の規律を設けるべきだったと思う。今後の見直しを期待。 - 講座。
憲法は医薬品のネット販売規制と職業の自由の前半。薬事法判決の解説は何度読んでもあたまに残ってない(駄目)。これを受けたR3年判決についてはそもそも存在を忘れているし(更に駄目)。
行政法は当事者訴訟、民衆訴訟、機関訴訟。当事者訴訟をめぐるH16改正以前の議論状況のくだりが面白かった(そこかよ)。
家族法は養子法の話。特別養子制度の問題点と最近の改正におけるその解消への努力についての解説が読みごたえを感じた。
商法は匿名組合の機能と現代化に向けた課題。そもそも商法総則商行為法をまともに勉強したことがない(汗)ので、匿名組合とかは名前を聞く程度だったけど、機能の紹介は興味深かった。課題の方はどこまで理解できたか心もとない。民訴は攻撃防御方法の提出と争点証拠提出手続。誰も出頭しない期日概念が、既に非訟事件手続法などで認められているという指摘は驚く(条文をみるとそうなっている。)。
刑法。承継的共同正犯。相変わらず読むのがシンドイ、とだけ。
刑訴。捜査手続のあたり。まあ、Pの人から見ればそうなるんだろうという程度。 - 演習。
憲法。給付行政をめぐる平等原則違反の申立てについて。解説の最後の段落での問題提起(?)にはなるほどと思う。
行政法。行政裁量が認められる根拠について、手続面からの正当化の議論は、これまで意識したことがなかった。
民法。譲渡制限特約。まあ、そうなるよねというところ。
商法。フライドポテトの話がない(謎)。総会の出席の意義とか考えたことがなかった(駄目)。
民訴。時機に遅れた攻撃防御方法の却下その他。建物収去土地明渡請求に対し建物買取請求権が行使された後には判決主文がどうなるか、とかの検討は、言われてみると...という感じ(汗)。
刑法。横領と背任、それと共犯というあたり。解説の内容には既視感があるが、釈然とはしない。
刑訴。自白法則とか違法収集証拠排除法則とかのあたり。自白法則と違法収集証拠排除との検討の順序はあまり意識したことがなかったので、考え方の解説はなるほどと思いつつ読む。 - 判例セレクトmonthlyは一年のまとめ。過去に誌面で読んでいるはずのものも碌に覚えていないものが相応にあって地味にダメージを受ける。
- 今月分の判例セレクト。
憲法の生活保護基準の改定と司法審査は、エビデンスとなっている客観的な事実と政策との間の具体的な関連性が審査される可能性に道が開かれている、という指摘に納得。
行政法の給水条例が定める免責条項と水道法15条2項の常時給水義務の件は、水道法自体ろくに知らないので、そういう規定があるのか、と思いつつ読む。解説最後の文の指摘は重要な気がした。
商法の無権利者たる株主名簿名義人を株主とする株主総会決議に基づく新株発行の効力の件は、解説での判示における問題点の指摘になるほどと思う。
刑法のベトナム技能実習生新生児遺棄事件は、判旨の解説の中でも保護責任を二重に肯定した理由についての説明は興味深く感じた。
刑訴の弁護人が辞任して定められた期間内に上告趣意書が差し出されなかった事例は、事件概要にある同一弁護人の選任辞任が繰り返された点からすればやむなしなんだろうなと感じる。
*1:この呟きに対して著者ご本人からレスポンスをいただいた。ありがとうございました。