職場の著作権対応100の法則 /友利 昴 (著)

一通り目を通したので感想をメモしてみる。ビジネス上著作権に接点があるならー通常の場合は接点がないということは考えにくいだろうがー、手元に置いて損のない一冊。

 

企業の法務・知財部門で働きつつ、複数の著作を出されている著者が*1、ビジネス上遭遇しそうな著作権及びその周辺に関する問題について、一般向けに解説した本。見開きで1テーマをQ&Aの形式で*2解説する形が100テーマ分、適宜コラムも交えつつ、通読可能な程度のコンパクトな形で収められている。

 

難しい理屈はかなり端折って、経験に基づく相場感も交えつつ*3、学説での議論も踏まえて*4、各種の日常的な問題に解説をしている。文章が平易で、解説内容も、こちらの見る限りでは、概ね穏当に見える。QとAの部分がフォントが大きく、Aの記載が端的なので*5、急ぐときは、そこだけ見て対応するというのも容易と思われる。また、大手の事業者の実務的な取り扱いについては、調べたうえで、具体的な記載もなされている(Q15、Q60等)。

 

以上の点からすれば、本書は、一般のビジネスマンの方々にとっても有用だろうし、企業内の法務・知財部門の方々にとっても、説明の仕方等も含め、学ぶところは多いのではないかと感じた*6。「あとがき」にもあるように、著作権等に関して、過剰な萎縮を避けつつ、適切にビジネスを推進するために、本書は、良い支援役になるのではないかと感じる。そういう意味で、手元に置いて損のない一冊といえると思う。

*1:こちらが拝読するのは、本書が初めてだが…。

*2:QとかAとかは書かれていないが、そう読めるので、以下その前提で記載する。

*3:法律の解釈論以外のところから出てくる話も含まれるので、企業外の士業の方々だとこういうものは却って示しづらいのかもしれない。

*4:学説の部分は、詳細についての手がかりが示されていないので、「裏取り」がしづらいところがあり、企業内法務・知財では、本書のみに依拠して助言などをするのは、緊急時以外は避けたほうがよいだろう。とはいえ、こうした点は、入門書という本書の性格からすれば、やむを得ないのだろうし、必要であればコンメンタールとか分厚い基本書などから辿っていくことで対応できるのだろうから、実害はそれほど大きくないだろう。

*5:断言しづらいときには、端的な表現の中でも相応の手当がなされていると見えるのも「腕」を感じさせた。

*6:細かい点では、目次の末尾に「基準日」の記載が有るところも、こういう入門書であっても、そのあたりに目配りを欠かさないという意味で、さすがと感じた。