60分でわかる! 改正個人情報保護法 超入門 / 弁護士 田中 浩之 (著, 編集), 蔦 大輔 (著, 編集), 弁護士 平岡 優 (著), 塩崎 耕平 (著), 本嶋 孔太郎 (著)

TL上で話題になっていたのと、時節柄気になる分野の本なのと、コンパクトな本ということで*1、購入して拝読した。令和3年改正後の個人情報保護法の入門書として、手元にあっても損はない本という印象。

 

森濱田松本の情報分野のパートナー2名が編著者となって、3名のアソシエイトの著者*2と共に制作したのが本書というところか。

 

見開きで1つのテーマについての解説等を完結させ、左側に文字による解説、右側で図表を使った説明と右下に内容の簡単なまとめ、というのが基本的なスタイルで合間にコラムを挟むという形で全体が構成されている。紙面は多色刷りで、強調表示や図表という視覚に訴える要素も多く、文字だけの本よりは単調さは少ないように思われた。その点では、似たような判型・分量の岡村先生の新書よりもとっつきやすさを感じる人も多いのではなかろうか。条文番号とかガイドラインの根拠をいちいち書かないのも、簡潔にまとめる上では有効な手段だったと思う*3。また、海外の同種の記載等、個人情報保護法の周辺の話にも触れられており、個人情報保護法周りで企業において対応を要する事柄について、なにがしかの言及があるような形になっているように見受けられるのも、有用だろうと思う。巻末に索引もついていて検索性が高そうなのも、良さそうな気がする。

 

他方で、「60分でわかる!」と銘打っているのは、そういう副題のシリーズものの一つだから仕方ないとしても、見開きの解説項目が65個、それに加えて付録とコラムがあるので、どういう読み方をしても「60分でわかる!」ということにはなり得ないように見えて、そこには違和感があった。また、入門、という割に、この本の次に何を読むのか、という点の言及がないのもいただけない気がした。

 

ともあれ、入門書としても、研修時の図解の引用元としても、使い道はあると思うので、企業内法務であれば手元にあって損はない一冊と感じる。

*1:某所の長いインタビューは、(自主規制)により見ないことにしている。

*2:アソの方々の著作として挙げられているもののバラエティの広さは、却ってこの本の質に疑義を生むのではないかという気がしたが、その辺りは如何なる考慮に基づいて記載されたのかが気になった。

*3:反面で、記載の詳細を確認したり、規制の更新の有無を確認しづらい形になっているのだが、そこは本文記載のメリットの代償として甘受すべきなのだろう。あと、一部を除き、記載の基準時が必ずしも明示されていないので、いつ時点の情報までが反映されているのかも分かりづらい。動きの速いこの分野だからこそ、本来は基準日を明記すべきと考える。その点は入門書であっても変わらない。