刑の重さは何で決まるのか (ちくまプリマー新書 454) /高橋 則夫 (著)

一通り目を通したので感想をメモ。

TL上で情報に接し、興味を持ったので、丸沼で購入したもの。

 

全体は5章構成。第1章は刑法学全体の鳥瞰というところか。第2章では犯罪論、第3章で処遇論、第4章で、本丸と思しき量刑論について、及び、第5章では最近の議論について、それぞれ「さわり」というか「ハイライト」を解説しているという感じ*1。刑法入門的なものを書こうという意図よりも、量刑論とか関連する最近の議論を紹介するために、前提として犯罪論や処遇論も紹介されているように感じた。量刑に至る「長く曲がりくねった道」という表現*2がその辺りを示していると感じた。

 

こちらもインハウス(企業内弁護士)という法曹の端くれ(ということになっている)が、普段刑事事件に接する機会がなく、刑事系については*3、知識的には、司法試験合格時点より後にあまり更新されていない(汗)というのが正直なところで*4、最新の議論は存じ上げず、その辺りについては、こういう議論もあるということを認識できたという意味では学ぶところがあったといえる。

 

具体的な事件(法曹的にはわりに有名な事件が多いという印象だが)を基に、具体的な説明が付されているので、解説についてわかりづらいということは少ないのではなかろうか。ただし、専門用語について、説明なしに使われているところもあり*5そういう意味で、法律の素養が全くない人にとっては、分かりづらいと感じるところがあるかもしれない。

 

*1:それゆえに因果関係のところは、いきなり危険の現実化の理論の話になっていて、従前の議論への言及がないのもやむを得ないのだろうと感じた。

*2:"The long and winding road"の訳と気づかなかったのはBeatlesファンとしては恥ずかしい限りである(汗)。なお、この曲についてはGeorge Michealのカバーも秀逸であることもこの機会に付言しておく。

*3:公法系もそうだし、訴訟もないから民訴も同様である

*4:雑誌の記事等を読んでも普段の実務との関係性が薄いところは、すぐに忘却の彼方へ消え去っているというのが正直なところである。

*5:この辺りは編集者の方のところで、著者に注意喚起などをしていただいた方がよかったのかもしれない。もっとも、事細かに解説するのも紙幅を食うし、読みやすさを損ねる可能性もあるから、判断が難しいところでもある。