ジュリスト 2022年 08 月号

目を通せた範囲で感想を箇条書きでメモ。

 

*ここ数カ月は、諸般の都合で全部に目を通す時間が取れないので、目を通せた範囲でメモをしておく。

  • 海外法律情報のうち、タイの刑事責任最低年齢の引き上げは、もともと7歳だったというのにやや驚く。まあ、個人差もあるから、最後はある種の決め打ちめいた話になるのかもしれないけど...。

  • サステナビリティの杜は、提灯記事に見えるのは気のせいだろうか。無茶ぶりするのを「エンゲージメントの機会を経営の機会に役立ててほしい」とかいって正当化する気なのかなと感じた。あと、大量保有報告書制度が制約となって協働エンゲージメントが実行できないとあるが、詳細が良くわからなかった。その辺りはポジショントークなのだろうから、どこまで真面目に取り合うべきかは不明確な気もする。

  • 判例速報。
    会社法退職慰労金支給につき取締役会に付議しなかったことの不法行為・任務懈怠該当性、については、付議しないのはやはり問題ありなのだろうと感じた。また、解説での主観的要件の検討漏れの指摘には納得。
    懲戒理由である暴行の被害者等への威迫行為を理由とする停職処分の適法性については、先例との比較での本件の意義の分析が興味深く感じた。公務員の事案であるが、論旨の多くは民間部門の労働者にも妥当しうるとの指摘にも納得。
    商品に付した単一の色彩で構成される表示の商品等表示該当性の件は、判旨の判断基準のうち、IIについては納得するところ。控訴審での判断に期待。
    不動産の分割と不動産取得税の課税に係る可否については、持分超過部分に関する制度がわかっていないせいか、よくわからなかった(駄目)。

  • 判例研究。
    経済法の景品表示法における「一般消費者」の意味と二重価格表示規制の件は、「一般消費者」の意味内容が措置命令取り消し事件と民事事件とで異なるというのは、保護しようとしているものが違うからというのはわかるが、法解釈の分かりやすさを損なう気がして、それが正当化されるのか疑問。

  • 実践知財法務は伊藤先生のソフトウエア開発委託契約と著作権。ユーザ側としてこの手の契約を見ることもあるので、無縁ではない。ユーザ側としては自社に著作権を帰属させたくなるがその場合でもそう簡単ではないことを改めて実感する。何より積読になっている伊藤先生たちの本を読まないと、と思う。

  • 新・改正会社法セミナー。債権者保護に関して、濫用的会社分割における「害すること」の解釈、では、濫用的会社分割に関する規定の解釈について、債権法改正での詐害行為取消権に関する条文の改正の影響を受けるのかどうかという点の検討が興味深かった(どこまで理解できたかはさておき)。
    支配株主の異動を伴う募集株式の発行、のI規律の潜脱の防止については、潜脱になりそうなパターンの検討が面白い。いずれについてもかなりレアな話にはなるのだろうが。IIの議決権割合の計算基準時・基準時までの変動、も、規制潜脱を考える会社が取り得る手段の検討が興味深い。IIIの株主総会決議が必要となる可能性を踏まえた実務上の制約、については、総会決議が必要になる可能性について、保守的に考えて、総会決議を取った方がいいのでは、と思いがちなのに対して、そうした状況下での総会決議の意味合いに注意が必要と感じた。状況が流動的なところでは特に気を付けないといけないと感じた。IV 違法な新株発行への対抗手段、無効原因のところでは、実際に206条の2第4項違反が生じるときにはどういう状況の下でなされるかということを、実例も踏まえて検討しているのが面白かった。普段こういう極限状況に近づくことがないと話についていくのも容易ではないと感じる。

  • 特集へ。長谷部先生の原稿は立ち位置的には全体のイントロ的な意味合いもあるのだろうか。2010年放送法改正の意味についての説明が興味深い。また、スマホの画面をみることを「礼拝」になぞらえている部分は長谷部節だなと感じた。