著作者人格権不行使についてのメモ

なんのことやら。呟いたことを基にメモ。

#up後に一部加筆等した。

 

某漫画の原作者の一件もあり、著作者人格権不行使特約についての種々の発言に接したので、感じたところを自分の頭の整理のためにメモしてみる。実に初歩的な話ばかりだが。

 

そもそも著作者人格権と一口に言っても、何についてのそれかを明確にする必要がある。また、どういう立ち位置で考えているのかも意識する必要がある。対象となる著作物の性質・態様を無視した過度な一般化は危険だろう。著作物が動画なのか、静止画なのか、静止画でも雑誌連載が続いているの漫画なのか、一点もののイラストなのか等で話が変わる部分があるだろう。また、著作者の立場での議論なのか、著作者に制作を依頼する側からの議論なのかでも、見え方が異なる部分はあるだろう。

 

出版社などのメディア企業以外で、著作者に制作を依頼する企業の企業内法務担当者の立場から見れば*1著作者人格権不行使特約は、関係する契約書にはまずは定めておくべきものということになろう。外部に制作を依頼するとなると、依頼して受領したものをそのまま、一点ものの芸術作品として額に入れて保管するようなことはあまりなく、何らかの形で手を加えるということの方が通常だろう。そうであれば、依頼者からすれば、受領したものに何かするたびに、著作者人格権に基づき何らかの申し入れがあるとなると、それが正当な権利行使であろうとなかろうと、対応する手間がかかって、煩雑に過ぎるということになるだろう。企業の担当者からすれば、権利調整にかかる手間(要するにコスト)は節減したいし、そもそも、そういう手間を考えると、制作の対価を提示する際には、人格権不行使も込みでの対価設定をしているのが通常だろう。

 

そういうアプローチで合意できない場合はどうするだろうか。もちろん、破談にするというのは一番わかりやすい結末だろう。後で変にもめるくらいなら、最初から破談にしてしまう方が良いという見方は十分成り立つだろう。別の考え方としては、想定される改変等について説明をするということだろうか。予測可能性を向上させることを狙うことになるが、もちろん想定は想定でしかなく、現実とは異なるかもしれない。そこには一定の不確実性(リスク)が残る。想定の範囲を超えた場合・超えそうな場合に別途協議とかすることも思いつくが、別途協議とは、協議の結果がどうなるかわからないという意味で不確実性を孕んで、手間がかかる。手間をかけるとなると、費用対効果との関係で疑義が残る。この辺りでどう決着させるか、ということになるのだろう。いずれにしても意思疎通を良くすることが、助けになるのではないか。とはいえ、それはあくまでも不行使条項を入れたうえで、というが通常だろう。

 

 

 

*1:僕はそういう立ち位置で見ることになるのが通常。