掲題の写真展を見たので感想をメモ。中平さんに関心があるのであれば、見ておくべき写真展だろう。
中平さんと森山さんの二人の写真展を見た時以来、中平さんの写真をまとめて見てみたいと思っていたら、この写真展の開催の案内がTLに流れてきたので、行ってみた。
初期のころのプリントなどはご本人がかつて焼却処分されたとのことで、そのころの写真は雑誌や写真集のページそのものが展示されていた。50年以上経過しているので、モノとして相応の迫力を感じるものが多かった。
初期は広角で、夜の様々な風景を、アレ・ボケも交えて横位置で撮っているという印象だったのが、様々な変遷の末、中望遠で*1、昼間に見たままのものを、アレ・ボケを排除する形で縦位置で撮るスタイルに変化していく様子、かなり振れ幅のある変遷を見ることができた。スペースもしっかり取って、相当な点数が展示されていて、見ごたえがあった。これだけの展示はそうそうできるものではないだろうから、氏に関心があるのであれば見ておくべきだろう。
氏のそうした変遷がどういうところから生じたのかはつかみきれない部分があったが*2、写真とは何か、を考えた末にそういう形にたどり着いたものということは何となく理解できた気がする。より正確には、ご本人の言葉や周囲の状況も踏まえて理解する必要があるのだろう*3。
個人的には、初期の夜の写真も蠱惑的な夜の美しさを感じ取れて*4、興味深く感じたが、後期の写真も撮る側の意図を排して、興味を持ったものについて、それだけを単体で切り取ろうとしているあたりが*5、印象に残った。以前森山大道氏が中平さんの写真を理解するには一定のコードを持っている必要があるというようなコメントをされていたのに、接したことがあるが、そのいくばくかは身に着けることができたのかもしれない。
今どきの展覧会ではすでに定番化している感があるが*6、今回も一部を除いて撮影可能だったので、一通り撮ってみた中で、特に印象に残ったものを*7、以下貼っておく*8。
(中平卓馬ポートレイト 1968年頃 撮影:森山大道 東京国立近代美術館 ©Daido Moriyama Photo Foundation )
(森山大道[中平卓馬ポートレイト]【お別れの会(2015年)で配られたプリント】撮影年不詳個人蔵)
夜 1969 東京国立近代美術館 グラヴィア印刷
「奄美 波と墓と花、そして太陽 」『アサヒカメラ』1976年2月号、朝日新聞社1976個人蔵*9
それと展示の外にあった看板というかなんというか。
この展覧会について専門家による紹介に接したので、以下リンクを張っておく。
*2:急性アルコール中毒による一部記憶喪失などの事故の影響がどこまであったのかは、興味深いが、そうした変遷がその事故以前からのことなので、事故の影響は過大にみるべきではないのだろう。
*3:その辺りの助けとして、カタログを購入しようとしたら、制作が追い付いていないとのことだった。もろもろ大変なのだろうから、文句は言えまい。一応予約はしてみた。
*4:こういうものが写真で撮れるようになると良いと思うのだが...。
*5:こうした姿勢を、カメラになろうとしたと評した表現にどこかで接したが、納得できるところである。
*6:SNSでの拡散による集客効果を期待してのことなのだろう。理解しやすいところではある
*7:後期のものは特にこれという特定の写真を示すのが困難なので省略した。
*8:展覧会で示されていたレギュレーションに従ってクレジットなどは付したつもり。いずれも #中平卓馬 火―氾濫
*9:順に従ってみていく中で、これまでになかった明るさを感じたので印象に残った。