最大決R5.10.25に目を通してみた。

たまには最高裁判決・決定でも読んでみるかと思い、目を通してみたので雑駁な感想をメモしてみる*1

 

目を通したのは、性別の取扱いの変更申立て却下審判に対する抗告棄却決定に対する特別抗告事件の決定で、@sho_ya先生の呟きで引合にだされていた、判決に対する一連の呟きを見て、「そんなことを最高裁決定で言うか?」と思ったからというところ。sho_ya先生もおそらくは批判的な趣旨で引合に出されているものと勝手に拝察するが、くだんの呟きは、何らかの意図に基づき故意になされたものでないとすれば、単に誤解に基づくものと思われた*2

 

個人的にまず感じたのは、結論として特例法3条1項4号については違憲無効としつつも、同項5号については原審での判断がないことから、審理を尽くすために原審に差し戻している点について、抗告人が求める審判を得るのが遅くなるだけで、無用な対応だったように思われた。審級の利益が放棄できることを考えれば、法律審として審理可能な範囲に絞って、審理をしたうえで、判断をして、結論(この場合は抗告人の求める申し立てを認めることになろう)を出すべきだったのではないか。その意味で少数意見の結論に説得力を感じた。

 

あと、13条違反についての判断基準の立て方についても*3、こういう立て方になるのか、という点も興味深く感じた。

 

少数意見については、草野裁判官の意見は、5号の規定を合憲とした社会と違憲とした社会を比較して、効用を比べるというような発想は、いかにもローエコという気がしたが、少数者の権利に関する検討の中でそういう発想をするのが適切なのか、疑問が残った。その意味では残る三浦裁判官、宇賀裁判官の意見の方が説得力を感じた。

*1:業務上社内調整とかが多くて、インハウスらしい?仕事から遠くなっている気がするということもある...。

*2:あえて反論をするような意図ではないが、くだんの呟きで問題視しているような状況は、多数意見の中には出てきていないが、少数意見においては、問題意識が軽視されているわけではなく、単にこの決定で問題となっている規定により対応することが必須ではなく、他の手段で対応可能であり、それで足りるはずだということが指摘されているものと理解したのだが...。もちろん、特に法学の素養のない方々にとっては、この決定文は、必ずしも読みやすいものではないのも争い難いところだろう。その意味では、既に別途指摘がでているように、本件のように社会一般に対するインパクトを持ちうるような件については、決定文とは別に一般向けの説明を最高裁が用意するなどしてもよかったのかもしれない。

*3:受験業界用語でいうところでは規範定立という言い方になるのだろうか。