一通り目を通したので感想をメモ。
若い人(高校生あたりだろうか)向けと思われる新書の中の一冊で、法律等ルール一般それ自体について法哲学の立場から考えるエッセイ風の本、というところか。文章のノリは軽く、身近な時事ネタ*1や古典文学*2や漫画*3の1シーンなどを取り上げて、それを基に過去の法哲学者の議論等を説明するという感じで、結果的に法哲学入門的な風味が出ている。日常の中にも法哲学的な議論を考える糸口はあるということが結果的に示されているのだろう。
取り上げられている事柄について、割と丁寧に論を進めている感じで、法哲学で議論されてる事柄のうち一定のものを紹介する形になっているようで、網羅的な法哲学入門的なものとはなっていないが、このくらいの話題のかみ砕き方がないと*4、心理的な敷居の高そうな法哲学という分野について、幅広い読者に触れてもらうのは難しいのではなかろうか。
身の回りにある様々なルールについて、その内容の当否をいちいち考えているとキリがない、社会生活が営みづらいというのは思わなくもないが、だからといって、事実上存在するそういうルール(それが法律かどうかはさておき)すべてについて、何も考えずに、結果的に「誰得」みたいな状態になるのもうれしくない。ましてや自分が納得しがたい不利益を被るようなときには、結果はどうあれ、ある程度の反対の意思を示したくなることもあろう。そうした意思表示を感情的なものとしないためには、一旦立ち止まって考えることが必要だろう。そのための手がかりを得るうえでは、通読が容易な分量の手ごろさ、ノリの軽い文章のもたらす心理的ハードルの低さ、を考えると、本書は悪い本ではないと思う。