法学部生のためのキャリアエデュケーション / 松尾 剛行 (著)

一通り目を通したので感想をメモ。今どきの法律を学ぶ法学部生の方がキャリアについて考えるうえでは、目を通しておいて良い本だと思う。

「中の人」が11人いるのではないかとか、実はChat GPTではないのか*1という説があった松尾先生の本。有斐閣からのキャリア系の書籍の第3弾。過去2作も拝読しているので、とりあえず購入してみた。

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過去の2作と何が違うのかというと、今回は法学部生のキャリア教育のための本ということで、弁護士になるのか、資格の有無はさておき企業法務に関与するのか、それすらも決まっていない方々向けというところになろうか。「出口」に近いところからより「入口」に近い層が想定対象ということになるはずで、逆に著者からすれば距離のある方々向けに本を書いた*2というところになろう*3

 

そういう立ち位置にあることもあり、キャリア教育一般についての記載がそれなりの割合を占めている。その辺りも相応の説明がなされていて、そのうえで、法学部卒のキャリアの展開のあり得るシナリオとして、様々なものが紹介されている。著者の立ち位置を反映して生成AIがもたらし得る影響についても語られている。直接その立場になったことがないところについても*4、相応に調べている*5のは、さすがというべきところ。それぞれの記載はそれほど詳しくないが、全体をコンパクトにまとめる要請があったと思われることからすれば大きな問題ではないだろう*6

 

大学時代にあまり意識的にキャリアを考えなかったものの、都度都度の選択の結果、今に至っている者からすれば、こういう話を大学時代に考えないといけない状況を、好ましいと評価してよいのか、躊躇うものがある。その点を措くとして、仮に、そういうことを考えようとするのであれば、本書は法学部生にとっては*7、多様な選択肢をコンパクトに示している点で良い本なのではないかと思う。知らない選択肢は取り様がないだろうから。願わくは適宜のタイミングで改訂を続けていただき、長く読み継がれてほしい。

*1:執筆には活用はされているようだが、ご本人は別におられる。

*2:実際は講義を準備してその内容を著書にしたということのようだが...。

*3:著者の多作ぶりについての一つの見方は、ある案件で準備したものを、何らかの形で論文や書籍に再利用していて、それが効果的になされている結果、ということになるものと思われる。

*4:それでも何らかの経験があったりされているのが凄いというかなんというか。

*5:著者のネットワークからすればそれほど困難ではないのだろう。

*6:授業のテキストとなるとテキスト代を安価にするという要請もあったのかもしれない。

*7:もっとも、当時のこちらのように法学部といっても政治系メインのような人間にとっては、この本は適切な本ではないだろう。ただし、そのことは本書の価値を損なうものではない。単に想定読者に実質的に該当しないというだけなので。