ジュリスト2021年1月号

丸沼で購入して、よろよろと読んでいたら、定期購読の開始で、次の号が来たので、目を通せた部分について、呟いたことを基に感想をメモ*1。おおよそ半分に目を通せたか。

 

 

まずは特集から。

  • 特集の座談会は、ジョブ型論に関して誤解・無理解が蔓延する中で、ジョブ型理論を言い出したとされる濱口先生が基礎から説明をしていて、不勉強だったので、得るところが多かった。ジョブ型の方が硬直的である点に日本企業は耐えられるのかという問いが印象的に感じた。ジョブ型・メンバーシップ型というのはあくまで理念的なものであって、大概の日本企業はその中間で、メンバーシップ型からジョブ型へのある程度のシフトが起きるのかなというのが、こちらの感想。
  • 雇用類似の働き方と法規制、は、雇用類似の働き方の多様さというか不定形さを、如何にとらえて、保護すべきところを保護すべきかについて、多様なアプローチが提示されているのが興味深い。実体の不定形さ、柔軟化に応じて規制の柔軟性を目指すべきというのは納得できるところかと。
  • 新たな働き方と労働時間管理、は、相反するところのある複数の要請をどうバランスさせて、整合性を取るか、という話についての論点だし、というところだろうか。労働時間の通算は、労働者に委ねない仕組みを作らないと労働者保護の観点を貫徹できない気がするけど…。
  • 副業・兼業と労災保険雇用保険、について。つじつまの合わせ方というところが大きいのかなと思うけど、昨今の状況下で、こういうのを許容しないと持たないというじり貧感を感じた。迅速な救済の必要性と事務手間とのバランスをどうするのやらという気もした。
  • 高年齢者の雇用と処遇は、50代にとっては、遠い未来の話ではないので、ドキドキする。要するに、国が貧しくなって年金とかがアレになるので、国も企業側に努力を求めていて、国としてもお願いベースの話だから、処遇に関して企業側の裁量が広くなりやすいということのように思われた。

特集以外についてまとめてメモ。

  • 冒頭の会社法判例速報。少数株主による総会開催に関して会社法385条の類推適用で監査役による差し止め請求権を認めるもの。少数株主が裁判所の許可を得て開催をするとしても、許可後に無体なことをしたら差し止めができないというのは妥当ではないから、差し止め請求権を認めるのは妥当な印象。
  • 森戸先生の判例速報。最高裁のバランス感覚に関する分析と、病気休暇に関する最高裁の判断の整合性についての指摘が興味深い。
  • 独禁法事例速報。取引上の地位がアマゾンに劣っていない納入業者、ってどれくらいあるんだろうと疑問。
  • 知財判例速報(どうでもいいけど、独禁だけ「事例」速報なんだ…*2)は京都市立芸術大学対京都芸術大学の件。需要者の認定のところは理由付けの説明がないのでよくわからなかった。
  • 租税判例速報は、行政からの種々の連絡のうち、いずれについて時効の中断効を認めるかという点が興味深いけど、連絡について色々種類が有り過ぎて、混乱する。
  • ドイツの刑法改正については、画像撮影に係る人格権保護を刑法でやるのか、と、変なところで感心した。
  • 裁判手続とIT化の記事は、僕も実際にTeamsでの書面による準備手続を経験しているので、頷きながら読んだけど、ネット経由での行為をどう訴訟記録化するかは、まだ検討がいるのかなというところ。控訴審とかでの使いやすさも考えないといけないだろうから。それと、フェーズ2もいいけど、なによりも、電子ファイルでの書面の提出を早く可能にしてくれと願う。カラーの証拠資料とかはカラーで出したいので。

 

 

*1:どうでもいいけど、次のが来たら強制終了、という区切り方は、こちらのように継続することを旨とする場合には、一つの発想という気がしてきた。気が向いたら加筆などはあるかもしれないけど

*2:この点については、当方の呟きに対して、独禁は審決とかが対象になるからであろうというご教示をいただいた。確かにそうなんだろう。ありがとうございました。