ジュリスト 2022年 06 月号

例によって呟いたことを基に箇条書きでメモ。

  • サステナビリティの杜は国連人権高等弁務官事務所。この分野は興味が持てないので、はぁさよかとため息をつく程度。
  • 海外法律情報。
    フランスの動物保護に関する法律(雑)については、虐待を防ぐのは理解可能な気がするけど、それを超えていると思われる部分があるので何とも言い難い気がする。あの国の連中は他国にもその価値観を押し付けてくるから油断しがたい。
    英国における議会解散権の復活の件は、英国憲法上での重要性が良くわからないので、どの程度のインパクトのある話かが見えない感じがした。
  • 判例速報
    会社法の、議決権行使の代理人資格の制限と弁護士の件は、解説にあるS51最判以降の動きをフォローできていなかったのに気づく(汗)。弁護士なら代理人として総会を撹乱しないというのは、弁護士にも色々いると思うので、ホントにそれでいいの?という気はしないでもない(汗)
    労働判例の、葬儀会社の代理店の従業員と葬儀会社の関係と労働者派遣法40条の6の件は、解説での評者の批判に賛成。派遣法40条の6に基づく申し込みに対する承諾は柔軟に認定しないと同条の趣旨を没却することになるような気がする。
    独禁法事例速報の、排除型私的独占に対する排除措置命令等取消請求事件については、審査の仕方に関する評者のコメントになるほどと思うなど。
    知財ツイッターにおけるスクリーンショット画像の添付と適法引用の成否の件が、スクショ添付が「公正な慣行」に合致しないというのは納得がいかない、という感じが強い。これはこちらがツイ廃だからかもしれないが(苦笑)。
    租税判例速報の法人税法22条2項と低額譲受けによる受贈益の計上については、解説の最後で示唆されているプランニングの難しさが興味深かった。
  • 時の判例
    普天間の件(略。最判R3.7.6民集75.7.3422)は、解説を読んでも、何だか実質論に踏み込まずに「逃げた」印象が残る。裁量論の判断としては間違っていないのだろうが。
    刑事の方(詳細略。最決R.3.5.12刑集75.6.583)は、解説では、本判決の判断枠組みがどういうものだったかについて、あまりはっきりしない印象(不勉強故に理解できていないだけかもしれないが)。判旨で示されていないからなのかもしれないけど、解説の意味がないのではないかと疑問に思った。
  • 実践知財法務は、現代アート・NFTアートと著作権。NFTアートが何かもわかってなかったので、なるほどと思いつつ読む。転売とかが思ったほど自由にできるわけではないのに気づく。
  • 時論。東京機械製作所事件の検討。MoM要件が許容される状況の考察が興味深いけど、4つの考え方が示されているうち最後の権利濫用的な観点からの正当化については、どこまでが権利濫用かが不明確だけど、柔軟な?事案に応じた判断はできそうで便利かもしれないと思ったりする。予測可能性は低くなるけど。
  • 判例研究。
    経済法のプリンタ本体の設計変更による互換性カートリッジ排除が問題となった件は、設計又は仕様変更の必要性に関する評価次第では、イノベーションを阻害する判断を導く可能性があるという指摘になるほどと思う。ちなみに、露骨に粗悪品のカートリッジが出回っているときにそれをハードウエア的に排除可能にすることも駄目なのだろうか。そうすることでユーザーに迷惑をかけない、みたいな議論の余地がないのはどうなんだろうという気がしないでもない。
    取締役選任決議不存在と会社株主間の債権譲渡の訴訟信託性は、事実関係が複雑でよくわからなかったうえ、訴訟信託って何だっけ?という状態なので話について行けていない気がした。
    外国人を被保険者とする生命保険契約の有効性及び説明義務の件は、評者が指摘する保険会社の行動の平仄の合わなさについては納得。生命保険協会生命保険相談所裁定委員会の裁定手続というのがあるのは初めて知った。
    レセプト債の発行と取締役の対第三者責任の件は、名目的取締役でも責任を負うはずが、SPCの取締役で実質的な業務執行を期待できない点から取締役の責任を否定したというのは驚く。SPC発行債権の主幹事社取締役の429条1項責任につき任務懈怠があっても損害との因果関係を否定する可能性の指摘は興味深い。
    再雇用拒否の適法性とカスタマーハラスメントに対する安全配慮義務の事件は、事案がかなりアレな事案なので、再雇用拒否やむなしという感があるが、評釈で指摘されているように、継続雇用拒否の適法性審査の枠組みは示してほしかった気がする。
    持株会社の労組法上の使用者性と義務的団交事項該当性については、この事案からすれば、そういう判旨になるんだろうなと感じた。評釈で説明のある持ち株会社の使用者性についての議論は興味深いが、3つの内最初の2つは荒っぽすぎて無理がないかと思ったりした。
    不相当に高額な役員対象給与の判断基準については、平均功績倍率法自体、そもそもどこまで適切なのか疑問に感じた。extraordinaryな功績があったひとでも、凡百な他の会社の水準で判断されてしまうのが常に適切といえるのか疑問。
    海外出張中の交通事故に対する出向先・出向元の民事責任の準拠法の件は、評釈の批判に同意。自賠責法3条の地域的適用範囲についての解釈論は、なるほどと思いつつ読む。
    ろくでなし子事件についてのものは、評釈の解像度が高いと感じた。裁判所が何をどこまで判断しようとしているのかの分析が興味深かった。被告人の目的を違法性阻却の段階で判断すべきだったという指摘には納得。
  • 新技術と法の未来は、企業とデジタル金融。この辺りは業務上接点もないうえ、興味もないので、話についていけなかった。グローバル化とかの中で同期性を調和させるか、プラットフォームの問題がどうなるか、というあたりが気になった。
  • 特集。
    荒木先生の最初の原稿は、総論的検討として、PFワーカーを含むフリーランスないし雇用類似就業者に対する法的アプローチについて検討するもの。各国の保護のアプローチの差異を図で表現したものが興味深かった。
    笠木教授の原稿は、PFワーカーへの社会保障のあり方について、フリーランスへの社会保障のあり方を起点に、論点整理というところ。こういう新しいモノへの対応については諸外国の例を参考することには意味があるのだろう。
    井川先生の原稿は、PFワーカーがPFに対して法的行動を起こす際の管轄などについて。権利救済の実効性確保のために、どういう問題があるのか、仲裁合意が妨訴抗弁として機能するのをどう防ぐかが興味深い。
    渡辺先生の原稿は、PFワーカー、ギグワーカーと課税ということで、ギグワーカーに対する課税の現状と今後の展望というところだろうか。色々あっても結局は、必要な手当てをしたうえで、PFに源泉徴収義務を課すというのが良いように感じた。
    鹿野先生の原稿は、PFワークについて民法の契約関係に関する事項を中心とした検討。思ったほど議論が進んでいないというのが印象。単なる仲介を超えて支配的影響力をPFが行使している以上、PFを影響力に応じて位置づける議論があるべきではないかと感じる。
    特集はPFをめぐる法律上の議論の現状の鳥瞰というところだろうか。普段Uberとかは使わないし、PFワークと接点がないので、関心もあまりないのだが、現状を見ることが出来たのは良かったと思う。
  • 新・改正会社法セミナー。
    株式併合のところは、「正当な理由」が議論される理由というか過去の経緯の説明は、今まで知らなかったので興味深いが、今更関係あるのかなという疑問が残る。上場会社と非上場会社とで扱いを変えるという田中先生の議論には納得。
    株式交付について。
    Iのところはなんだか空中戦っぽくて議論の実益が見えなかった。
    IIの株式交付子会社の取締役の義務は、個別の状況ごとで細かく義務を認定すると、大きな目標に向かってやっているはずの株式交付自体に支障が生じるやしないか懸念する。
    IIIの選択的対価の可否のところは、立案担当者が否定的に考える旨の解説があることもあって、利用しにくいという結論になっているのは、仕方がないのかもしれないが、今一つ釈然としない。指摘があるようにパターナリズムに過ぎる気もする。
    VIの公開買付規制との関係は、金商法とか米国証券法について無知なので、そういうものかと思いつつ読む。
    VIIの有価証券発行規制との関係のところは、株式交付の制度の理解の仕方が解釈に影響しているのが興味深く感じた。
    VIIIの株式交付親会社取締役の保身のための株式交付の差止めについては。できないと困ると思うけど、論理構成が問題で、ここでは2つのアイデアが示されていて、善管注意義務違反を理由に816条の5の法令違反を主張するよりも、210条2号の類推適用の方が無難という指摘は、なるほどと思う。
    IXの株式交付の無効原因のところは、規定上は仕方がないのだろうなと感じた。無効になった後の対応は大変そうだけど。