ジュリスト 2025年 10 月号 [雑誌]

例によって目を通した範囲の感想を、呟いた内容を基に箇条書きでメモ。

  • 冒頭のイントロのあとは買いたたき規制の強化・補充。改正により委託事業者側のリスクが高まった感がある。この辺は文中で指摘のあるように実例の集積を待つ必要がありそう。今回のパブコメで多少情報が出てると良いのだが(汗)
    手形払等の禁止—代替的支払手段の使用制限は、何だか無駄にややこしい議論のようにも見えたが、どうなんだろう。
    運送・物流業界への独占禁止法規制の現状と特定運送委託の追加による影響は、指摘されている複雑さが必要なものだったか疑問。著者の指摘する法改正が妥当に見えるのだが…。
    従業員基準の追加と実務対応は、パブコメでのQAが出る以前の時点での堅い解釈論と感じた。従業員数確認に伴う双方の手間を無視した立法と改めて感じる。
    フリーランス法の施行状況は、最近の状況をフォローしていなかったので興味深く感じた。
    特集は今回の改正の傍迷惑さを感じた。早いうちに多少なりとも状況を改善する形での再改正を望む。
  • 判例速報。
    会社法の競合提案の具体化等のための時間の確保を目的とした買収防衛策は、解説最後で指摘されている問題点は確かに難しいと思う。個別事情次第にしかならない気がする。
    労働判例の元執行役員である顧問と高年法上の継続雇用制度は、解説で指摘されている問題点がなぜ生じたのかが気になった。また、本件が控訴されたのかも気になった。
    独禁法事例速報の個人情報保護法が絡む独禁法事例における命令の執行停止の可否は、論じるべきところを端的に捉えている感じがした。
    知財の商標の識別力は、商標法3条2項該当性について他事例との比較が分かり易く感じた。
    租税の海外のカジノ施設におけるギャンブルと収入金額の存否は、一般納税者の感覚に関する指摘には納得。
  • HOT Issueは知財高裁20年の軌跡と展望という鼎談。知財周りは企業内ではほぼ関与したことがないので、知らない話ばかりだが、知財高裁もいろいろやっているんだなと思いつつ読む。一点気になったのは、高部元裁判官が、国の力は特許だろうと言っている点。昨今のコンテンツ系の状況を考えるとそうとは必ずしも言い切れないのではないかと感じたので。
  • 海外法律情報。
    ドイツの連邦憲法裁判所裁判官の選出等に関する法改正は、政治から距離を保つためには必要な措置なのだろう。
    アメリカの裁判書面における生成AIの使用とハルシネーションは、指摘されているように本人訴訟での不適切な利用は日本でもありそう。裁判所が厳格な対応を取るのは当然なのだろう。
  • 霞が関インフォの「食べ残し持ち帰り促進ガイドラインSDGs目標達成に向けて~」については、SDGsというお題目の下ではこうなるんだろうけど、ご都合主義的に見えるのも否定し難い。
  • 書評。
    仲道祐樹=樋口亮介編『刑法の「通説」』は、本書の積極的な意義の説明が分かり易い。骨董通り法律事務所編、福井健策=小林利明編著『エンタテインメント法実務〔第2版〕』は、同書の中で評者が着目したところに納得。
  • 時論
    地方自治の本旨」と比例原則—地方公共団体への国の指示権をめぐっては、これまで議論が不活発だった領域に外国での議論から示唆を得ようとするもので、個人的には興味深く感じた。
    社会保険における「年収の壁」問題とその対応策は、そういうものなのか、と思いながら読むが、勉強不足でよく分からなかった。
    「ロボットタクシー導入等に向けた自動運転における自賠法上の損害賠償責任に関する検討会 報告書」の概要及び今後の検討課題は、検討対象外のレベル5での運用との連続性とかどうなるんだろうと疑問。
  • 連載/民事訴訟手続のデジタル化のこれからのフェーズ3における運用の検討(2)—電子申立て②は、色々考えて制度はできているのだろうけど、何処かに穴があるのではないかと気になった。
  • 連載の地方創生に向けた官民連携の法実務の官民データ連携は、連携が難しいこと感じさせる。まあ、仕方ないのだろうが。
  • 連携広報と法務の法務が広報の力を借りる場面(3)—ルールメイキング、企業の支配権争い、不祥事からのリカバリー、法務・コンプライアンス施策の社内外広報は、両者の協働が必要な場面具体的に示されていて分かり易い。脚注で示された某社のコンプライアンスポリシーは長いが平易で分かり易い。
  • 新法の要点の労働施策総合推進法の改正—カスタマーハラスメント(カスハラ)の法制化は、カスハラ自体を禁じてはいないものの、カスハラ自体が許されない旨条文上明らかにしたことの意についての指摘になる程と思う。
  • 時の判例の公訴事実の同一性の件(詳細略)は、仙台高裁判決の扱い方が興味深く感じた。
  • 判例研究。
    経済法の個人情報保護法との関係が問題となった取引妨害の事例は、評釈を読んでいて、元のユーザーとの利用規約で他者によるデータの更新を許容する形になっていたらどうなっていただろうかと考えた。
    商事の会社による課徴金の支払いと取締役の損害賠償責任は、評釈での、違反行為に直接関与しなかった取締役の監視義務違反に関する指摘や、課徴金の取締役への転嫁に関する指摘に納得。
    取締役への損害賠償請求権に債権者代位権が認められた事例は、評釈での債権者による債権者代位権の行使と、会社や株主による取締役の責任追及との関係の整理に納得。
    弁護士資格を有する取締役の任務懈怠責任と過失相殺は、M&Aについての知見の有無を検討せずに弁護士であるだけで高度な善管注意義務を認めることに疑問を呈する評釈での指摘に納得。
    労働判例の大学教員の無期転換権行使の有効性は、まあ、そうなるのかなあと思いながら読む。
    勤務地限定合意の有無と配転命令の有効性は、配転命令の有効性に関する評釈での判旨批判に賛成。
    租税判例の就労継続支援B型に係る工賃の支払と仕入税額控除の可否は、話についていけていない感じだった。
    渉外判例研究の韓国で発生した船舶事故に関する損害賠償請求と「特別の事情」は、韓国で船主責任制限手続というのがあるというのが目を引いた。準拠法の勘案の仕方に関する評釈での批判は、形式論としては理解不能ではないだろうけど、形式論に寄りすぎていないのか気になった。
    刑事判例研究の控訴審における事実誤認(刑訴法382条)の審査方法は、高裁での実務感覚の指摘が興味深く感じた。