雑駁なメモ。他人様の呟きのクリッピングが中心だけど。
次のニュースに接した。パナソニックが価格指定制を導入するという。
その取引形態は、パナソニックが在庫リスクを負担する代わりに、価格決定権を持つというもの。同社の指定した金額で販売価格が統一されるため、消費者にとってはどの販売店で買っても同じとなる。メーカーは販売店側で必要な数量だけ商品を納入し、売れなければ返品に応じる。 2020年から導入を始め、2021年度には同社の家電製品の8%、白物家電に限定すると15%がこの形態で取引されている。ヘアドライヤーの「ナノケア」など競争力のある製品が主な対象となっており、今後もそうした製品で導入を拡大させていく方針だ。
価格指定を小売に求めるとなると、再販売価格維持の問題が出そうだが、これらの点はクリアする方法があるという。専門家の先生方の呟きをメモしておく*1。
▼再販売価格拘束が原則違反であることは遅くとも1975年最高裁判決で確立
— 白石忠志 SHIRAISHI Tadashi (@shiraishijp) 2022年6月19日
▼川上業者がリスク負担なら中間業者の価格を拘束しても構わないことは流通取引慣行ガイドライン「単なる取次ぎ」の記載で、当該記載は策定当初1991年から存在
パナソニックが「価格指定制」導入拡大https://t.co/0sDLRmMp0O
「単なる取次ぎ」は『独禁法講義 第9版』144-145頁に書いてあり、YouTube動画でも触れています。 https://t.co/csiD4Mq0Tk
— 白石忠志 SHIRAISHI Tadashi (@shiraishijp) 2022年6月19日
再販売価格の拘束が独禁法違反と「ならない」ようにするための合法かつ戦略的な施策。ただ、違法とならないようにするには結構条件があるので慎重な準備とコントロールが必要です。https://t.co/Z6FOoaHBXU
— 長澤哲也 (@NagasawaTetsuya) 2022年6月19日
かねてから相談の多い施策であり、拙著『独禁法務の実践知』145-150頁でも詳細に解説しています。
— 長澤哲也 (@NagasawaTetsuya) 2022年6月19日
この点については、かの会社が相談をしたのではないかという指摘にも接した。公取に事前に相談している可能性に思い至らなかったのが悔やまれる。
事前確認していれば 相談事例集にのっているはず とおもったらやっぱりありました。https://t.co/W8oa2XImpQ
— とり頭法務部員 (@toriatamahoumu) 2022年6月19日
以上を踏まえて、いくつかの個人的な疑問。
- ビジネスとして成り立つの?というのがまず疑問。価格競争を封じて勝てるの?という疑問が浮かぶところ。それだけの製品を作り続けられるの?というのは疑義がある。
- 小売店側は受け入れるのだろうかというのも気になる。在庫リスクを負担しないことについてはメリットもあるだろうが、販売戦略の中で重要なはずの価格決定権を大幅に拘束されることを良しとするのか。反発して、かの会社の製品を排除する動きも出るのではないかという気もするがどうだろうか。
- その他、別途指摘があったとおり、リベートとかの問題や、経理処理はどう整理したのかも気になるところ。
- 仮に、以上をすべてクリアしたとしても、この原材料不足のところで、そもそも製品を納入できるのかという疑義がある。半導体などのモノ不足の中で、対応しきれるのか、興味があるところ。偉そうなことを言っても結局製品を納入できないのであれば、戦略が画餅に帰すだけでは済まないのではないか。