取り急ぎ目を通したので感想をメモ。現状のスナップショットとして手元にあって損のない一冊ではないかと感じる。
好むと好まざるとに拘らず、この手の流行り物についての相談は来るところなので、自分たちがこの手のものに直接関わるかどうかはさておき、最低限の知識は備えておくべきと考える。現場が十分な検討なしにこの手のものの「活用」を始める危険はどこにでもあるのではないか。そういう事態への対処として最低限の知識は必須なのだろう。その意味で、大手事務所の先生方が、この分野の現時点での入門的知識を180頁以下にコンパクトにまとめた本書は有用と考える。
本書は第1章でchatGPTなどの生成AIとはそもそも何かを説明し*1、第2章で関係する法律論を簡潔に鳥瞰し、第3章で生成AIが「活用」される場面ごとの法的な問題点を簡潔に説明し、第4章で今後を展望しているという構成。文章も平易で、全体が大きさも分量もコンパクトにまとめられているので、まずは通読したうえで、必要に応じて主に第3章を紐解くことで、企業内法務での相談に本書をファーストエイド的に活用することが考えられる。そうした意味で、企業な法務担当者にとっては手元にあって損のない一冊と言えるのではないか。
もちろん、コンパクトにまとめたゆえに、限界はある。気が付いた点を一応メモしておく。コンパクトさの代償というところだろうから、これらの点は前記の利点をさほど損なうものではないと考える。
- この手の動きの速い分野では、記載がいつ時点の話なのかが重要と考えるところ、そこが必ずしも明確ではない(これらを明記している本の方がまだ少ないのかもしれないが)。「はじめに」の記載からすれば2023年8月のどこかの時点なのだろうが。「本書執筆時点」という表現が数か所で出てくるのと相まって、yやや不明確ではないかと感じた。
- 記載の考え方の裏付けとなるもの(判例とかだろうか)への言及がないのも気になった。脚注でも付してそこで言及すべきだが、そもそも脚注も省略されていることになる。
- 「入門」という割に、その先の読書案内がないのも、本書の記載だけでは不十分な時の対応の手助けとなるものがないので、前記の点も相まって本書の記載を起点にリサーチとかもしづらいということになる*2。