10年以上前に初版には目を通していて、改訂版も出た時に買っていたが、長らく積読山の中にあった。今回たまたま目を通したので、感想をメモ。企業内法務でも一度は目を通して置くべき一冊だろう。
本書が2部構成で、第2部の法令用語の解説が中心というのは、初版から代わっていないが、第1部については、Q&A形式から、法律全体の構造というマクロレベル、個々の条文の構造というメゾレベル、法令文で用いられる用字・用語を中心に個々の条文の表記に関するお作法のミクロレベルの3段階に分けて、法制執務について解説する形になった。レベル分けしてくれたことで、個人的には、解説の解像度(という言い方が良いのかは不明だが)が上がった感があり、読みやすくなった気がした。
個人的に第1部で印象に残ったのが、「前段」「後段」の区別についてのもの。独禁法における「不当な取引制限」を根拠条文について、3条後段として摘示することの問題点が白石先生の「講義」に記載されていて*1、その根拠となる記載があったので、なるほど、と思った。
第2部の内容については、ある意味で、基本的なところ、というべき内容だが、全部が全部そうとも言い切れず、こういうことだったっけ…と思いながら読んだところもあった。「その他」「その他の」の区別はいまだに迷うし*2、「協議」「同意」「承認」「合意」のそれぞれの差異、特に後ろ3者の差異については、意識していなかった部分もあり、なるほどと思いながら読んだ。
「はしがき」にあるように、法律の解釈については、まずは条文を読むというところから始めるのが筋のはずなので*3、こういう本で、条文の読み方の基礎を確認しておくことは、法律に関わる人間にとっては重要であることは、多言を要しないものと考える。そういう意味で、本書の様な、衆議院法制局という立法のプロの方々が書いていて、内容的にも信頼でき、かつ、200ページとコンパクトな*4本書のような本を手元に置いておいて、条文の読み方で迷ったときにはすぐ参照できるようにしておくことは、回避可能な過誤を避けるうえでは重要だろう。そして、その際には一度は通読した上で手元に置くのが良いのではないかと考える。