取引先リスク管理Q&A〔第2版〕/ リスクモンスターデータ工場 (著)

一通り目を通したので感想をメモ。与信管理周りの最初の一冊としては良さそうに思われた。

 

与信管理周りで定評のある会社の手によるもので、弁護士も監修者に入っているというもの*1。弁護士の監修の割には、法令について条文番号とかが引かれていないが、これは、そういうものにアレルギーがある読者への配慮なのかもしれない。

 

200頁弱とコンパクトな中に、与信管理や取引先の倒産リスクへの対応(平時と戦時)について一通りのことが書いてあるという印象。紙幅に限りがあるので、個々の叙述は、こういう場合はこういう感じで対応をすべき、という程度の抽象的な記載に留まっていて、この本だけで実際に個々の事態に対して具体的な対応ができるというものではないように思われる*2。ともあれ、この本は、そのコンパクトさを生かす意味では、関連する実務に付く人が最初に目を通して、その後は、座右においてチェックリスト的に使うという感じになるのではなかろうか、と感じる。

 

最初に紐解く本、ということを考えると、法律の条文番号がないのはさておき、個々の記載に基づき、実際に行動を起こす際に必要なより詳細な解説への案内がないのは、残念に感じるところ。もちろん同じ部署に手練の先達がいるのであれば、その方に訊くなどすれば対応可能だろうが、そうでない場合には困るのではないか。

 

現職もそれ以前も、与信管理とかその辺りは管轄外な上に*3、幸いなことに、これまでのところ回収周りのシビアな話にも接したことがない。ただ、いつ何時シビアな話が持ち込まれるかはわからないというのも事実であり*4、この種の本が一冊手元にあるというのは悪いことではない気がしている。この手の本で、ある程度の方向性がわかれば、後の詳細は、自分で本に当たるなり、外部に相談するなりすることはできると思うので。

*1:こういう業者の方が本を出すとなるとポジショントーク全開で実はあまり役に立たない、みたいな事になりがちな気もするが、本書については、そういうものはむしろ控え目に見えた。

*2:個人的には、与信管理の仕組みづくりについての記載は、初めて接する情報だったこともあり、興味深く拝読したのだが。

*3:結局相手先のナマのデータを持っている部署がやるのが適時に対応するうえでは適切であろうと思うところで、そうなると、現場に近い、営業管理のような部署でやるのがむしろ適切であって、本社機能の中でするのは、必ずしも適切ではないのではないか、と感じるところである。

*4:ここから後で景気が悪くなることも想定されるので、余計にそう思う。