Q&Aでわかる 業種別 下請法の実務 単行本 /長澤 哲也 (著, 編集), 小田勇一 (著, 編集)

下請法の適用のある企業の法務に関わる人にとっては、本書と公取のテキスト(毎年11月に改訂されるので最新のものをDLするべき)は手元においておくべきと感じる。

 本書の構成について、「はしがき」では次のように記載されている。

本書では、下請法が問題となりやすい17業種について、Q&A方式で各業種に特有の論点を採り上げ、解説しています(第2編)。また、各業種に共通する下請法のエッセンスを抽出し、それを取引の段階ごとに整理して、下請法の全体像を把握しやすいようにしています(第1編)。第1編と第2編は、いずれからでも読んでいただけるよう、相互のレファレンスを設けています。

 

第1編は、長澤先生の手によるものだけど、下請法における基本的な概念について、民法の原則に立ち返って説明しているので、理解し易く、こちらの理解の解像度が上がる感じがした。また、エンフォースメントのところでは、運用状況を踏まえて、一歩踏み込んだ指摘がされているのも興味深かった。

第2編は、経験豊富な先生方の手により、17業種(その中にはアニメーション産業も含まれている)ごとに、FAQとその回答及び解説、それと、業種ごとの下請取引の特徴が解説されている。業界ごとのガイドラインとか業界の特徴に関する資料の紹介もある*1

 

17業種のうち11業種が製造業といえるのだけど、一口に製造業といっても、作っているものの違い等によって、下請法との関係で問題の様相が異なってくるということも分かる*2。そういう意味で、下請法という切り口からそれぞれの業界の取引・仕事の仕方のあり様を窺い知ることができるので、その業界について知るための手段としても有用かもしれない*3。そういう意味では、これまでかかわりのなかった業界の法務について知る必要が生じたときに当該業界に関する部分、及び、文中で言及のある関係する参考資料に目を通すという使い方も可能と考える。

 

下請法との関係では、本書については、第1編の総論部分と第2編の自分に関わりのある業界についての記載だけ読むという読み方が一般的かもしれないし、それでも、より事業に即した対応をしやすくするうえでは有用だと思うけど、個人的には、本書については通読をしておくべきと感じた。というのも、紙幅の関係で、各業界についての解説には限りがあるから、よく読むと他の業界のところで解説されている内容が、自分のかかわりのある業界での対応に資することもあるのと、通して読むと問題として表面に出る部分は異なっているように見えても、共通している部分もあるということも、理解できて、そういう形で下請法に対する見方を養うこともできると思うから。

 

そんなこんなで、非常に有用な本だと思うし、個人的には、これまでのところ、今年の一押しなのだけど、一点、追加で望むのであれば、それぞれの記載について、公取のテキストの記載に基づく部分はその部分の特定をしてほしかったというところ。紙幅との関係で難しいのかもしれないけど*4、脚注とかの形で付してもらえるとさらに良かったのではないかと感じた。今後も適宜アップデートされて長く読まれることを願う次第。

 

*1:ネット上にあるものについては、URLまで載っていると良いのではないかとも感じたが、資料名をいれて検索すれば足りるので、なくても大きな問題ではない。

*2:個人的に一番興味深かったのは、自動車産業のところ(設問数が一番多い)の中で「働き方改革」による親事業者側の労働時間短縮などのしわ寄せが下請けに行った場合の対応について解説がされている点で、かの業界の構造がこういうところにも反映されているんだなと感慨を新たにした次第。

*3:こういう使い方ができるその他の本としては、こちらの積読山の中にもあるが、「業種別 法務デュー・デリジェンス実務ハンドブック」が考えられる

*4:あのテキストが毎年改定される点がその種の対応をしづらくしている原因かもしれないが