月刊法学教室 2023年 09 月号

例によって呟いたことを基にメモ。今月は(おそらく来月も)全部には目を通せなかった*1

  • 巻頭言は、短さが印象的。先月号との特集で内容もなるほどと感じた。
  • 法学のアントレは、判例廃止論として法哲学から判例を考える内容。マスで見た時にはこういう見方もあり得るのかもしれないとは思った。
  • 特集は会社法理論の進展と実務の動向。神作先生のイントロの後は、株式の相続について。著者の仲先生の論文の紹介めいている感があるのは仕方ないのだろう。民法の共有の規定との交錯が面白く感じた。
    ついで松中先生の買収防衛策の展開とその適法性。ここしばらくの間に色々動きのあった分野のまとめ、という印象を受けた(そういう印象が正しいのか判断できるだけの知見がこちらにあるかどうか怪しいが。)。
    福島先生の取締役選任決議の取消し・無効と瑕疵の連鎖は、S45,H2,H11,R2の各最判の間の整合性をどのように考えるかの議論が面白く感じた。個人的には多数説として紹介された議論が良いような気がしたが。それと最後の指摘には納得。
    行岡先生の取締役会の監督機能は、取締役会の監督機能の名のもとに複数の考え方が混在しているという指摘に納得。あまり明示的に意識したことはなかったのだが(汗)、言われればそうだよなと思う。
    高橋先生の取締役の第三者に対する責任は、受験勉強の時にこの辺りが何だかよくわからないなと感じたことを思い出した。実務でこの辺りが問題になった事例に接したことが幸いにもなかったからすっかり忘れていた(汗
    笠原先生の組織再編行為における対価の不公正と法的救済方法は、そもそも「公正」が何かというところが腹落ちしていないところでいろいろな整合性も含めて考えてもやはり消化不良な感じが残る。最後は割り切るしかないのだろうけど。
    特集は、最近はこういう話が議論されている、ということの鳥瞰として興味深く拝読できた。本来であればキャッチアップできていないといけないところも必ずしも十分できていないので(汗
  • 判例クローズアップは令和3年衆議院議員総選挙一票の格差。「立法者の努力を評価する司法判断の手法」の分析が個人的には興味深かった。努力とかを評価するような話かというとどうなんだろうとは思ったが。
  • 講座。
    会社法の時計では会社代表権の制限等と取引相手方の保護。現場の感覚についての言及があり、そこで指摘される内容に異議はないのだが、何を根拠にそうした指摘を学者の著者がするのか、やや疑問が残った。
    刑訴は比例原則。行政法の比例原則との距離感を図るような感じの解説や比例原則の限界やその先についての議論の紹介が興味深く感じられた。
  • 演習のうちレポート。社会保障法の分野で課題の探し方を解説。課題の探し方を砂金採りになぞらえているのはなるほどというところか。

*1:あまりストイックすぎるとこの手の企画?は長続きしないというのも経験の教えるところではあるのだが...。