最近の脊髄反射:件数を数える意味は?

何のことやら(苦笑)。呟いたことを基にメモ。

契約書レビューの件数という話題が時折出るが*1、今なお、それを数えることにいかなる意味があるのか、理解できない。個人的には正直真面目に数えたことがない。

 

契約書をレビューするといっても、それぞれの長さも違えば難易度も違う。状況次第では、結果として出来上がった書面は短いけれども、当事者間の歴史も含めて考慮要素が多く、難易度が高いということも十分あり得る。そういう事例を考えると、長さと難易度とは比例するとは限らないことは多言を要しないだろう。そういうことまで考えると、単純に処理件数だけを数えることにいかなる意味があるのか。また、やっつけ仕事で処理件数だけ上げればいいとなると、不適切なバイアスがかかる可能性もある。こうした問題は、件数を処理時間とかに変えても、似たような話になるように思われる。

 

そういう意味では、中途半端な定量化は有害無益な行為ともいえるのに、なぜその種の行為がまかり通るのか。疑問が残る。

 

上記のようなことを呟いてみると、識者の方々から反応があり、そうした反応からすれば、要するに、その種の行為は、業務の実情は知らないものの、人事権だけは持っている人事部その他の「素人」向けのもの*2、というのが相場と思われる。比較可能性がなかったり、副作用のある「定量化」にどこまでの意味があるが疑義はあるが、その辺りの状況を顧慮しようとしない「定量化」「見える化」信者というのは企業内に一定数いるようで、そういう手合いへの対応という側面は、残念ながらあるのだろう。定量化により、管理が容易になるという説もあるが、一般論としては否定はしないものの、こと契約書の審査業務について、定量化が管理可能になったという話がどこまであるのか、個人的には疑問なしではない。契約書の審査依頼が来ること自体が管理可能ではないところで*3、どうやって管理するのか。管理をしているとの幻想にしがみつく以上の何かができるのか、疑問に思う。

 

追記)up後にこちらのエントリに接した。なるほど、そういう使い方は状況次第ではあり得るかなと思う。

legalxdesign.hatenablog.com

*1:特定の言説に苦情を述べる趣旨ではない。念のため。

*2:したがって、転職面談などでその手の話になるのもそうした「素人」作業のなせる業という見方も十分成り立つだろう。こちらも数限りなく転職面談を受けているが、その種の話は適当にお茶を濁していても、そのことで不利益が生じたことは、記憶する限り、ない。

*3:契約法務に限らず、企業内法務の所管する業務については、研修系などこちらから打って出るもの以外は、むしろ管理不能なものの方が多いのではないかと感じるがどうだろうか。