何のことやら。思いついたことを雑駁にメモ。一部は過去にネタにした内容かも知れないがご容赦あれ。
理由はよくわからないが、企業内法務だと契約書の内容審査などの際に、当該契約書などの外国語訳を求められることがある。法務だと翻訳ができるという話はないはずなのだが、何故かそういうことがままある。どういう理解がなされているのかは不明だが(言ってくる側が何も考えていないだけという説も有力な気がするが…)。現在・過去の勤務先の複数で体験しているので、ある程度普遍性のある現象のようにも見える*1。
言うまでもなく、翻訳という行為については、相応に知見もいるし*2、その手間もかかる。仮に、契約書などについての拘束力のない参考訳であっても、事実上訳文の内容しか見ないという人間が出る危険を考えると、手間をかけないわけにはいかない*3。当節流行りの機械翻訳を使うとしても、こちらの見る限り、何も精査せずに外に出せると判断できることはない*4。
問題は、企業内法務において、そうした手間をかけることにいかなる意味があるかというところと考える。この問題は、今に始まった問題ではない。前世紀末のこちらが企業内法務に従事するようになった頃から、時折直面する問題である。いずれにしても、企業内法務が翻訳をその主力業務としたり、またはそれを専門とする部署でないことは明らかと思われる*5。あくまでも企業内法務は、企業の法的リスク*6の管理をする部署というべきで、その限りで、翻訳などの内容を精査をすることがあるというに留まるというべきである。そうなると、その種の業務にどこまで資源を投入すべきかという問題については、状況に応じて検討が必要で、状況次第では、外注すべきということになろうし*7、その際の費用負担については、言い出した部署が負担するのが適切、ということになろう。
*1:当然のことながら、その種の依頼に対するこちらの最初の応対は大要「うちは翻訳業者じゃないんで」というものになる。なお、ここでいう、翻訳業者、というのは、別にその種の業務に従事されている方々に対する悪意に根ざすものではないことを付言しておく。
*2:この点の理解が一番難しいような気がしている。無形の知的活動の所産に対して金銭を支払うことの意義を理解しているかどうか、というところにも関係するのだが。相手の知性の成熟度合いに応じてその難易度も変化することになるというのが、こちらの経験則である。
*3:そうしないと後で余計な手間が増えることにもなりかねない。
*4:もちろん、ここは判断する側の能力次第だろう。ある種の「割り切り」をすることが適切な場合がないとはいえない。ただ、法的な権利義務のの発生、消滅、変更などに関する書類について、その種の「割り切り」をすることが適切なのかは、なお慎重な吟味が必要と考える。
*5:かつては外資系企業の中には、社内規則を共通化するため、それらの翻訳を専門とする部署があったと聞いたことがあるが、今はどうなっているか、寡聞にして存じ上げない。
*6:これが何を意味するのか自体にも議論がありそうだが
*7:その際の外注先の能力の見極めも必要になるが、安易に依頼をしてくる部署ほどその種の能力の見極めができず、目先の金額以外の要素を理解することができない事が多いので、注意をしないと、余計な手間が増えることになることは留意が必要であろう。翻訳についてもその中で専門分化していることは最低限認識しておく必要がある。その中でも契約書などの法律文書は一つの専門分野になっていると見てよいのではないかと考える。下手なところに出すと機械翻訳以下の出来上がりになっていることすらあり得る。