「相談」をしない理由(わけ)

呟いたことを基に雑駁なメモ。体感に基づくものでしかないので、別異の意見等があり得ることはあらかじめ付言しておく。

 

いわゆるJTC企業の管理職の方と思しきアカウントの方が、大要、部下が退職する前に「相談」*1してほしいということを述べているのに接した。

 

こちらのように退職経験が複数あり、かつ、部下からの退職の申し出も複数回受けたことのある立場からすれば、それは無理だろう、と感じる。

 

下手に「相談」をしたら、当該上司の不興を買い不利益を被るリスクも有るし、極端な話として、そういう形で実質は退職カードをちらつかせて何らかの条件交渉をするという手法は、その相手方等に対して、そういうことをする人間、との認識を与えることになり、それ自体が後に自身に不利に作用する危険が残るから、その危険を踏まえてもなお、という時以外は使いづらく、通常は採り得ないと見るべきだろう。

また、当該上司に「相談」したものの、結局退職に至った場合には、その上司の上司から、知っていながら遺留しきれなかった点、を糾弾等される可能性もあり、「相談」する側からすれば、そのリスクを相手に負担させることに躊躇することもあるかもしれない。前記のとおり、自身にも危険があるとすればなおさらのこと。

 

そういう意味で「相談」とかをすることを管理職側が期待するほうが、何か見誤っているのではないかという印象を禁じえない。寧ろ、「相談」してくれたら、望外の僥倖と見るべきだろう。

 

仮に、退職前に何かを、と管理職側が考えるとすると、あえて言うなら、退職する人間は、何らかの「サイン」が出ていることもあり、そういうものを逃さないようにする、という程度ではないかと感じる*2。そういう「サイン」を読み取りそこねているから、上司は、突然退職の申し出が来たように感じるのだろうし、退職する側からすれば、そうした「サイン」を読み取れないような相手に相談しても意味がないというところだろう。そうした「サイン」には、待遇に対する不満や上司との不和(業務上の意見の不一致も含む)等が含まれるだろうが、そういう「わかりやすい」ものばかりとは限らない。僕自身は、過去の転職時には、意図的に何らかの「サイン」を出すようにしていた。退職がサプライズになって訳のわからない事態(要するに人事異動)が生じて「被害」を受ける人間を減らしたいからそうしているが、前述のように、そうした行為については、本人にリスクが生じるので他人にはお勧めしがたい。それとは別に、過去の転職に際して、その前後で、周囲の管理職から、僕が普段していないネクタイをしていたということ等から、意図して出していた訳では無いが、一定の「サイン」が出ているのを読み取られるということも体験したことが有る。他方で、僕自身は、上司の立場としては、そうした「サイン」に気づけたときもあるが、むしろ気づけなかったときのほうが多いので*3、こうしたことに気づくのは簡単ではないと感じている。

 

そこまでのことにまで目を光らせることができないとするなら、むしろ、退職の以降表明を受けたら、極力気持ちよく旅立てるように配慮をするとか、いついなくなっても良いような体制を整えるとか、そちらの方に注力するほうが適切なのかもしれない。職の流動化が進んでいると考えれば、こちらの発想のほうが適切なのかもしれないと思う。

*1:ここでいう「相談」の意味内容自体にも疑義があると感じるのだが、一旦脇に置く。なお、以下では、企業内法務に限った話をしているわけではないことに留意されたい。

*2:もちろん、慰留する気がないのであれば、それに対して何ら表立った反応をせず、単にその日がきたときに対する備えだけをするというのも、管理職としてはあり得る反応かもしれない。職場が慰留するに値する状況でないと認識したときにはそうなるかもしれない。

*3:流石に気まずいので詳細はここでは伏せておく。