例によって雑駁なメモ。分かるようで分からないメモで、過去に何らかの形でエントリにした内容も含まれるかもしれないが、ご容赦ください。
【注:PCトラブルのせいか、スペース直前に全部エントリが消えているのに気づき、スペースの相手方の方々と事前共有していた部分から復旧した。その関係で、注釈のつけ方が通常と異なっているが、この点はご容赦いただきたい。】
例によって、#萌渋スペース のためのメモ。今回は、こちらからのリクエストでキャリアネタ*1をいってみようかと。関心の高そうなネタだけど、大丈夫か、と思いつつ思いついたことをメモしてみる。こちらも相応に流離っているわけだけど、そういうところから気づいたことを述べてみる次第。こちらは、馬齢を重ねる中で、諸々の巡り合わせに恵まれた結果、気が付くと資格がついているが、資格があるだけという感もあり、こういう話題には気になるところがあるのも確か。
例によって、#老獪 #剛速球 でお馴染みの(謎)、擬古文先輩こと経文緯武先輩からの突っ込み*2におびえつつ...ではあるのだが。
同じ企業に居続けることの利害得失
所謂JTCであれそれ以外であれ、程度の差はあっても、基本的には居続けることのメリットは大きく、それを安易に無視すべきでないということはまず最初に強調すべきだろう。特に1社目にいる人に対しては。待遇面(退職金等)もそうだけど、その会社のビジネス分野における経験値の向上、社内外での認知度向上に伴ってお役目が回ってくること(そうでないとできないことが多い)、など、一旦流浪の民を始めると二度と取り戻すことのできないものが、相応にあることは、まずもって認識すべき*3。
では、何故「動く」のか。いくつかのシナリオが想定できるような気がする*4。
- ハラスメントなどで、居続けることが、精神的又は肉体的に苦痛である場合。これは仕方がない。某二次妻・無双御大が#杉原千畝プロジェクトをされていて、そこでも述べられているように、自分のメンタルが崩れるような事態になると、リカバリーに時間がかかるうえ、メンタルが安定していないと転職活動自体もおぼつかない(面接などが突破できない)ので*5、被害が深刻にならないうちに、速やかに「転進」を図るべきであろう。
- 望むキャリア展開が得られない。これも難しいものがある。この中でもさらにいくつかのパターンが想定可能と思われる。網羅的ではないが挙げてみる。
まず、1社の中で、法務部門長には、近い世代の中で1人しか就けないのが現実だろう。法務部部長は複数あり得るとしても。人数の多い法務部門では、1人の法務部門長の陰には、望んでもそのポジションに就けない人間が一定数出ることもある。そこまで行かなくても、座りたい「椅子」に空きがあるように見えないときに「転進」を考えるのはそれほどおかしなことではない。企業規模によっては、管理職に上がる時点で「椅子」取りゲームをしなければならない状況というのもあり得る。
それとは別に、異動ガチャというべきもののも想定される。法務以外の部署に異動となって、法務としてのキャリアを積めない、又は、積めるどうかに疑義が生じる可能性*6ということになろうか。こちらについては、2,3年とかの期間限定であれば*7、異動するのも一案かもしれない。この点は後述する。
法務部門内でも、積みたい経験が積めない可能性というのも考えられる。例えば、自社の機関法務(総会とかの担当。総会の当日だけ手伝うような話とは異なる)は、要するマンパワーの少なさ、求められる判断の精緻さなどから、担当が固定化しやすく、同じ人間がずっとやり続けることにメリットがあることからすれば、近い世代の担当者がやっていると、自分に担当するチャンスが回ってこないことも想定される。そういう場合に、そのような経験を積みたいとなったら他所の会社へということも視野に入ってくる。
異なる会社への転身することへの難しさ
他方で、他の会社に行くことも、容易とは限らない。仮に転職活動が上手く行って採用されたとしても、その先に問題があることもある。
まずは「空気」が異なることの難しさがある。これは転職経験がないと理解しづらいかもしれないが、業種の差異を別にしても、色々な「空気」のようなもの、言語化しづらい文化のようなもの、が企業ごとに異なる可能性があり、そこに慣れるのに相応の時間がかかる。業界が同じでも会社ごとに違うし、業界が異なれば特にその差は大きい*8。
裏を返せば、自分の認識が、これまでの職場に規定される部分が思ったよりも大きいことは、認識をしておくべきかもしれない。
とはいえ、他方で、営利企業である以上、共通している部分はあるし、類推などが可能なこともある。つまり、これまでに自分が得たことをどう使うか、というところでカバーできる部分がある。この辺りは自分の認識を、異なる文脈においてどう理解しなおすか、というところでもあると考える。
こうした点については、別の見方もあり得て、転職者は、プロパーの社員からすれば「異世界」から来た「異邦人」のようなものであり、そういう立場だからこそできることというのもある、ということもいえると思う。特に法務のような「専門性」を纏っている場合は、プロパー社員であれば読むことが必須の「空気」について、それを読まないことが許容されることもある。その点を上手く使うことで、プロパー社員であれば、「空気」を読むがゆえにできなくなるようなことが出来てしまう可能性がある。この点は、有資格者だと余計にやりやすいことは言うまでもない。実態はどうであれ、傍目から見たときに、「独立」して食べていけると思われる立場ということからすれば、「空気」を読まなくても仕方ないと見てもらえるということがあるのではないか*9。
無資格であることの難しさ
資格を取る、という選択肢が現状取りづらいのは、個人的には適切とは思い難い。しかしながら、既にこちらのblogでも何度かコメントしているように、日本の資格については、特に働きながらの資格取得は、割の合う話とは限らないことは否めない。その場合、有資格者との差別化をどう考えるか、ということも問題となるだろう。この点で、インハウス組が忌避しがちだからこそ、「差別化」のための手段等として事業部門経験を活用するという発想もあり得るかもしれないと思う*10。なお、こういう経験も、頭の使い方次第では汎用性があると考えていることも付言しておく*11。
有資格者が中途採用の場合は、無資格の生え抜き社員にとっては、生え抜き社員であるが故に有しているものを生かすというのもあるかもしれない。メーカーとかであれば、管理系社員が製造現場に身を置く機会は新入社員のときくらいしかないことも多く、中途採用の方々にはそういう経験を得る機会は少ないだろうから、そういう経験を踏んでいることや、「同期」のネットワークがあることなどは、うまく使えれば有利に働くだろう。
また、上記とは別に、差別化または「転進」の余地の確保等のための事業部または他部署経験という発想もあり得るのではないかと考える。
まず、法務部門以外の経験というのは、活かし方次第では法務部門での業務にも活きると考える。事業部門での経験は、事業部門が管理系をどう見ているか、どう「使おう」(時として「出し抜こう」「都合よく利用しよう」かもしれないが)としているか、ということや、どういう点を重視しているのか、という点の肌感覚(数字に追われる営業マンの感覚は、実際に自分が数字に追われないと実感しにくいのではないか)を理解することに資するし、そういう理解は、性善説に立たずに法務業務をする上で有用であることは間違いない。
それから、時として、新入社員から本社の法務一筋で来てしまうと、「思いあがる」人間が一定の確率で出る。こちらの過去の勤務先でもそういう風に見える事例に接したことがある。法務をプロフィットセンターにというお題目は唱えられるが、大抵の場合コストセンターだろう。しかるに、その点を無視または軽視してプロフィットを稼ぐ部隊を見下すような人間が出るわけで*12、そういう風になるのを防ぐ意味でも、事業部門に身を置く経験は意味があると考える。ある種のリスク管理ということになろうか。
別の見方として、事業部門または他部門の「仲間」であったことを活かす、というのもあるかもしれない。「同じ釜の飯を食う」という言葉があるが、事業部門から法務に移動(復帰も含め)した人間は、当該事業部門の人間からみれば、かつての「仲間」として親しみを持ちやすい、相談がしやすいということもあろう。その事業部門からの相談窓口という立ち位置を取りやすいということもあるものと考える。その部門にとっての敷居を下げるという意味では、そういう立ち位置を取ることは一定の意味があるだろう。
さらに、別の観点を考えることもできる。先に述べた通り、法務の職種で昇進というのは簡単ではない。法務部門内での競争があるときには、そこで敗れたときのことを想定する方が危機管理の面で望ましい。業務の性質上法務に近い性質のある部署があれば、そちらに移るという選択肢も想定可能だが、それにも限度があるかもしれないし、そういう選択肢がないかもしれない。社内で法務以外の部署への転身を、人事などが検討する際に、他部署では「つぶしが効かない」と判断されて、行き先がなくなる可能性もある。そうした意味で他部署経験があることが救いとなる可能性も否定できない*13。
以上のようなことを考えると、ある程度期間を区切って、事業部門の経験を積むことも、必ずしも悪い話ではない、ということも言えるのではないか。その間法律知識などについて、間が空くという欠点はあるとしても。ここでのポイントは期間を区切って、というところであって、戻れる気配がないなら、社外に、という話を考えることになろう*14。事業部門でいきなり戦力になるのが難しい可能性も考えると、最初の1年は「お客さん」だったとしても、次の1年で戦力になる、という意味では2年とかを一つの区切りで考えるのはあり得る話ではなかろうか。
・・・いずれにしても、なかなか楽な道がなさそうなところで、こちらの経験からいくつかのことを述べさせてもらった次第。どなたかの参考になれば*15、幸いです。
*1:なお、以下では、主に無資格法務(この表現は好みではないがお許しください。なお、以下では資格の国籍は問わない)の方向けとなっている。
*2:場外?から某ネギ先輩(仮称)その他の有識者の方々とかからの突っ込みもありそうだけど
*3:さらにいえば、1社に居続けることを放棄し、転職への心理的なハードルが下がってしまった以上、転職が「癖になる」可能性があることも留意しておくべきだろう。
*4:以下では、書いていないが、会社自体に問題が生じて、会社の存続が危なくなるというのも想定すべきシナリオには含まれるかもしれない。そういえば一時期、行く先々で何かが起きる「持っている」法務担当者というのもいるわけだが...。
*5:僕も、過去においてそういう経験をしたことがないではない。
*6:この点は、行く先の部署で想定されている業務についての確認が重要といえる。法律・法的思考に基づく判断を要する業務が社内でどのように分担されているかによっては、法務と名前がついていなくても、他社でいうところの法務部門が担当している業務を、そうした名前を冠しない部署が担っている可能性もあるからである。
*7:法務に戻れないなら、転職という手段を想定することになろう。
*8:この変化に慣れる能力は、加齢により下がる気がするので、40過ぎて初めての転職というのは個人的にはお薦めしがたいと考える。
*9:他方で、資格者の場合は、懲戒リスクに直面するというのがあるのだが...。
*10:なお、こちらは初職で事業部門から本社法務に異動し、その後海外事業部門の中の法務セクションに異動したという経験があり(2社目から後は本社法務機能しか経験していない。)以下の内容は、主にそのあたりの経験からの物言いになっていることを付言しておく。
*11:さらに付言すれば、汎用性を持たせる手段としては、言語化してみることが有用であるとかんがえる。自分の経験から感じる違和感を、当該経験を共有していない他人に説明できるよう言語化することは、その内容に汎用性を持たせるうえで有用と感じるところである。
*12:管理職自体がそういう要素を持っていたりすると部下がそれに影響される可能性は相応にある。そういう実例も見たことがある。
*13:もっとも当該事業部で「やらかす」と、それがマイナスに作用する場合も想定されるのは言うまでもない。
*14:もちろん、事業サイドの方が面白くなって、本格的にそちらに転進、ということだってあってよいだろう。
*15:反面教師になる確率が高いかも。
追記:スペース後のTLでのコメントなどを見て、若干のコメントをしたので別エントリにメモした。