呟いたことを基にメモ。
概要JTCからNDAのドラフトについて指導をしている内容が流れて来たという呟きに接した。そのことに批判的な呟きと共に。やや違和感があったので、違和感の所在をメモしてみる*1。
JTC、特にメーカーでは、NDAは法務部内でOJTの材料に使われることが多いような気がする。事業部門から色々なことをしっかりと聞き取って法的判断をするというトレーニングをする上で貴重な素材なのとともに、そもそも量が多く、他方で単体では比較的短い文書なので、反復練習に適しているし、若手でさばいてくれれば、上の手間が省けるという両面がある*2。同様の位置づけをされるものには、印紙税の対応や下請法対応(調査対応を含む)があるような気がする。
そういうところでは、製品について仕様書などを開示する関係でNDAを締結することになるし、そういう情報の持つ重要性を考えると、安易に締結するわけにもいかない。そこでしっかりと個別具体的な事情を聴きとって、内容を判断することが求められる。その際には、事業部門がNDA単体でどういうことを実現しようと考えている、に限らず、NDAを締結して情報をやり取りした後に、どういうビジネスが展開される可能性があるか、その際にNDAの下でやり取りした情報がどういう意味を持つかを視野に入れた検討をすることが望ましい。NDAはその次以降の行動が想定されているはずだから、それらに対して想像力をどう働かせるかも重要になり得る*3。
そういう過程で得られた能力が、その他のところでも活きるわけで*4、NDAに労力をかけ過ぎに見えたとしても、そこにはそういう意味もあろうかと。したがって、労力をかけることをもって、そのことを批判するのはやや早計なのではなかろうかと思ったりする*5。
*1:以下はこちらの経験に基づくもので異論等があり得るのは言うまでもない。ついでにいうと、こちらが以下の内容を常に貫徹できているわけでもないことも付言する。
*2:ここでは、法務部門の若手は資格者とは限らないということも留意をしておくべきかもしれない。また、トレーニングは、トレーニングをする先輩社員にとっても、後輩を指導する経験を積むという意味があることも留意が必要であろう。
*3:その反面で、自社製品が購入される以上の展開がないこともあり得るのも事実だが...。
*4:別途ちくわ先生からご指摘をいただいたが、聞き取りの過程で事業部門との間で関係性を構築して、相談などが来やすくするという意味も重要と考える。またNDA締結なしには秘密情報の取り交わしを開始しないという管理をする場合には、NDAの締結は急ぎになるので、そういうものを上手くさばくことは、事業部の信頼を得ることにつながり得る。
*5:もっとも、それでもなお、労力をかけ過ぎということはあり得るのは言うまでもない。