依頼者は誰?

脊髄反射的な呟きに基づくカジュアルな(謎)メモ。

 

外の弁護士と企業との関係においては、当該弁護士に対する依頼者は法人としてのその企業全体と見るべきと考える。法人の一部が契約の当事者となることはあり得ない*1というのがその理由となり得るだろう。ただし、当該法人それ自体が意思を示すことはできず、何らかの形で、窓口として動く人間が必要となる。その場合、外の弁護士からすれば、窓口に立つ担当者・担当部門が依頼者に見えることも理解可能である。そして、その窓口又は担当が、依頼者全社の利益を体現するものと仮定することになるのだろう。もちろん仮定でしかないが*2

 

個人的には、その仮定が誤っていないかという検証はいらないのかということが気になる。そのうえで、その仮定が間違っている可能性があったり、窓口の担当者の発言内容などからその点に疑義が生じたときにどうするのかということも気になるところ。たとえば、特定の事業部が、本社法務部を説得するために外の弁護士の力を借りるような場合は、前記の過程が成り立たない可能性があると考える。個人的にはそういう事例に接したことはないが、TL上でそのような事例を見たことがある。こうした場合は、当該外部弁護士との委任契約において、適用範囲を当該事業部に限定する合意が併せて成立しているなどとの整理をすることはあり得るのかもしれない*3

 

もっとも、別途指摘もあったように、多くの場合、外部の弁護士としては、依頼者企業内部でのそういった認識の齟齬などの事情をうかがい知ることはできないだろうし、仮に認識し得たとしても、調整の機会も通常はないと考えられる。寧ろ内部での調整に期待する方が自然なのだろう。

*1:実際にはそういうドラフティング事例も見ないではないが、厳密な意味では観念できないはず。過去においてはそういうことをやって怒られたこともあるが(遠い目)。

*2:なお、企業内法務(機能としてのそれであり、実際の名称は問わない。)にとっての「依頼者」を仮定するなら、それは、同じ社内の特定の事業部でなく、会社全体とみるべきと考える。そう考えないといけないような事態というのも想定できると考える。特定事業部の利害と、その事業部以外も含めた全社の利害とが相反するときなどはその一例だろう。

*3:依頼者と依頼者の特定の一部が異なるとなると、依頼者のために働くはずが、依頼者でないもののために働いたことにもなりかねないように思うので、そのような整理をする余地があるのではないかと思うのだが...。