内部通報窓口についての備忘録

何のことやら。

 

しばらく前の公益通報者保護法改正対応で、現勤務先の内部通報窓口に関する制度のテコ入れを行った。規程類の改訂や通報窓口のメンバー選定等を行い、自分自身も窓口メンバーに入って、いくつかの案件では対応過程にも関与した。そうこうする中で、興味深く思ったいくつかの点についてメモしてみる。現時点の僕の疑問であり、特段答えはないが備忘の為にメモしておく。こちらのこれまでの経験に基づくもので異論などがあり得るのはいうまでもなく、またこちらの挙動は一切棚上げしていることも付言する。

 

1.窓口の人選をどうするか

受付だけなら外注はできるし、その手のサービスはあるが*1、通報を受けた後の調査をどうするのか。外部の人間が調査をするとなると、密行性が確保できるか疑義があろう*2。噂が広まり、別の問題行動につながる可能性も想定する必要があるのではないか。調査対象の問題行為者(パワハラ事案であればハラスメント行為者)が自己に対する調査が始まっていると認識した時点で、何らかの対応策を講じて調査の実効性を阻害する可能性もあるのではないか。

また、調査を依頼された者である点に疑義が生じないとしても、そういう相手に対して被調査者がどこまで知っていることを真摯に話すのか。よそ者への警戒感が強いと簡単ではないのではないか。また、話したとして、理解できるのか。製造現場の社員で高卒入社で、それほど言語による意思疎通が得意でない者もいる可能性もある。弁護士事務所に外注したとして*3、その辺りをどこまでできるのか。さらに、仮に真摯に話したとして、調査者がどこまで社内の諸制度や技術を理解できるのかも疑問があるが、そこは依頼する側が説明などするしかないのだろう。

逆に内製する場合にはどういう部署の人間がするべきか。ハラスメントとなると人事、総務、法務あたりの人間が出ればよいのかもしれないが、それで足りるのか。営業や製造などラインの業務についての情報が取れるか、取っても理解できるか。そういった部署の人間が調査等に入らなくてよいのか、調査される側が不安や不満を覚えないか、というあたりは疑問が出るかもしれない。もっとも、外回りの営業や製造現場に出ている人間がその種の調査等に従事する時間が取れるのかという問題はあろう。聞き取りをするにしても、周囲に聴かれない形ですることになるが、そういうことができるのか、スケジュールの調整ができるのか、というあたりで疑義が出るのではなかろうか。

 

2.社内で通報後の調査を行う場合、調査業務担当者の評価をどのように行うか

上記のような懸念や疑義、費用対効果を考えて、社内で調査をすることにしたと仮定する。その場合、調査担当者の負荷をどのように評価するか。日常の業務の中に位置づけることができればよいが(法務とかコンプライアンス、人事、総務であればまだ容易だろう)、それ以外の部署の方から支援を得る時にはどういう形が良いのか。

また、何らかの形で日常業務の中で位置づけたとしても、調査業務に従事した成果などをどう評価するか。ハラスメント系の話とかは「被害者」の話を聞くのはそれなりに精神的な負担がかかることもあるように思う*4。そうした業務についてどのようにその担当者の業務評価の中に反映させるか。

 

3.効率化をどう図るか

密行性を保ちつつヒアリングを慎重に進め、それを記録化し、聴取内容を基に善後策を検討し、必要な内部手続を行ったうえで、遂行するとなると、時に手間がかかる。何らかの省力化を図れないか。通報受付はネット経由で対応する(今だと多言語対応も可能)というのはあるし、ヒアリング内容は録音して、反訳の外注に出せば、文字に起こすことはできる。調査から事実認定まで外の弁護士事務所に外注することも不可能ではない。いずれも費用はかかるし、仕組みを軌道に乗せるためには相応の対応が必要だろう。

 

・・・オチも何もないがとりあえずメモしておく。

*1:自動翻訳と組み合わせて多言語対応するものもある。

*2:メーカーの地方の製造拠点とかだと、本社の人間など、拠点の外から人が来るだけで目立つ可能性がある。

*3:事実認定までやってもらう意味では弁護士事務所への依頼は、費用を別にすれば、少なくとも選択肢にはなるだろう。

*4:評価とは別にケアがいることもあろう。